目次
住んでいる県の平均寿命は、全国の中で長いほうなのか、短いほうなのか。ニュースで「長寿県」という言葉を見かけても、元の統計がいつのもので、どう計算された数字なのかまでは、あまり語られない。
この記事では、厚生労働省が5年ごとに作る「都道府県別生命表」の最新版(令和2年、2022年12月公表)から、47都道府県の平均寿命を男女別に並べた[1]。年齢ごとの順位の入れ替わり、1965年からの推移、健康寿命との違い、そして毎年作られる全国の最新値(令和7年簡易生命表)もあわせて見ていく。
1. 結論:男性1位は滋賀の82.73年、女性1位は岡山の88.29年。男女とも最も短いのは青森
- 男性の1位は滋賀県で82.73年。 2位は長野県(82.68年)、3位は奈良県(82.40年)[4]。
- 女性の1位は岡山県で88.29年。 2位は滋賀県(88.26年)、3位は京都府(88.25年)。1位から5位の熊本県(88.22年)までの差は0.07年しかない。
- 男女とも47位は青森県。 男性79.27年、女性86.33年だった。
- 1位と47位の差は、男性3.46年、女性1.96年。
- 全国の値(都道府県別生命表の計算による)は、男性81.49年、女性87.60年。 これを上回ったのは、男女とも22都道府県だった。
都道府県別の「最新版」は令和2年。全国の最新は令和7年
平均寿命の統計は、厚生労働省が3種類つくっている[3]。
| 種類 | 作る間隔 | 最新版 | わかること |
|---|---|---|---|
| 簡易生命表 | 毎年 | 令和7年(2026年7月公表) | 全国の平均寿命 |
| 完全生命表 | 5年ごと | 第23回・令和2年(2022年3月公表) | 全国の平均寿命の確定版 |
| 都道府県別生命表 | 5年ごと | 令和2年(2022年12月公表) | 都道府県ごとの平均寿命 |
都道府県別生命表は1965年(昭和40年)から5年ごとに作られていて、令和2年版が12回目にあたる。人口の少ない県では1年ごとの死亡数が偶然で大きくぶれるので、令和2年版は2019〜2021年の3年分の死亡数と、2020年の国勢調査の人口を使って計算している[3]。つまり、この記事のランキングは「2019〜2021年ごろの死亡の状況」を表したものだ。
2025年の国勢調査をもとにした次の版(令和7年都道府県別生命表)は、2026年10月時点ではまだ公表されていない[11]。それまでは、令和2年版が都道府県別の最新の数字になる。
なお、都道府県別生命表の全国値(男性81.49年、女性87.60年)は、各県と比べるために県と同じ方法で計算したもので、同じ2020年の完全生命表の値(男性81.56年、女性87.71年)とは少し違う[12]。全国の水準を知りたいときは、完全生命表か簡易生命表を見るのが適切とされている[3]。
全国の最新値:2025年は男性81.35年、女性87.33年
毎年の全国値を示す令和7年簡易生命表(2026年7月24日公表)では、平均寿命は男性81.35年、女性87.33年で、前の年より男性0.25年、女性0.20年延びた[13]。前年からの延びを死因ごとに分けると、悪性新生物(がん)、心疾患、新型コロナウイルス感染症などの死亡率の変化が延ばす方向に、肺炎や老衰が縮める方向に働いている[14]。
全国の平均寿命は、2020年の男性81.56年、女性87.71年のあと、2022年には男性81.05年、女性87.09年まで下がった。厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症、心疾患、老衰などの死亡率の変化が縮める方向に働いたと説明している[16]。2025年はそこから戻りつつあるが、まだ2020年の水準には届いていない。
国際比較では、国によって作り方が違うため厳密には比べられないとしたうえで、厚生労働省が入手した資料の中では日本の女性は1位、男性は7位だった(男性の1位はスウェーデンの82.52年)[13]。
平均寿命は「亡くなった人の平均年齢」ではない
平均寿命は「0歳の人が、あと平均何年生きられるか」(0歳の平均余命)のことだ。ある年の年齢ごとの死亡率がこの先も変わらないと仮定して計算するので、その地域の年齢構成には左右されず、死亡の状況だけを表す[3]。高齢者の多い県だから平均寿命が長く出る、ということはない。
また、平均寿命より長く生きる人のほうが多い。令和7年簡易生命表では、生まれた人のちょうど半数が生きている年齢(寿命中位数)は男性84.13年、女性90.17年で、平均寿命より3年近く長い。90歳まで生きる人の割合は、男性26.7%、女性50.8%だった[15]。
2. 47都道府県ランキング:上位は近畿・中部・中国地方、下位は東北と北関東
| 順位 | 男性 | 平均寿命 | 女性 | 平均寿命 |
|---|---|---|---|---|
| ― | 全国 | 81.49年 | 全国 | 87.60年 |
| 1 | 滋賀県 | 82.73年 | 岡山県 | 88.29年 |
| 2 | 長野県 | 82.68年 | 滋賀県 | 88.26年 |
| 3 | 奈良県 | 82.40年 | 京都府 | 88.25年 |
| 4 | 京都府 | 82.24年 | 長野県 | 88.23年 |
| 5 | 神奈川県 | 82.04年 | 熊本県 | 88.22年 |
| 6 | 石川県 | 82.00年 | 島根県 | 88.21年 |
| 7 | 福井県 | 81.98年 | 広島県 | 88.16年 |
| 8 | 広島県 | 81.95年 | 石川県 | 88.11年 |
| 9 | 熊本県 | 81.91年 | 大分県 | 87.99年 |
| 10 | 岡山県 | 81.90年 | 富山県 | 87.97年 |
| 11 | 岐阜県 | 81.90年 | 奈良県 | 87.95年 |
| 12 | 大分県 | 81.88年 | 山梨県 | 87.94年 |
| 13 | 愛知県 | 81.77年 | 鳥取県 | 87.91年 |
| 14 | 東京都 | 81.77年 | 兵庫県 | 87.90年 |
| 15 | 富山県 | 81.74年 | 神奈川県 | 87.89年 |
| 16 | 兵庫県 | 81.72年 | 沖縄県 | 87.88年 |
| 17 | 山梨県 | 81.71年 | 東京都 | 87.86年 |
| 18 | 宮城県 | 81.70年 | 高知県 | 87.84年 |
| 19 | 三重県 | 81.68年 | 福井県 | 87.84年 |
| 20 | 島根県 | 81.63年 | 佐賀県 | 87.78年 |
| 21 | 静岡県 | 81.59年 | 福岡県 | 87.70年 |
| 22 | 香川県 | 81.56年 | 香川県 | 87.64年 |
| 23 | 千葉県 | 81.45年 | 宮崎県 | 87.60年 |
| 24 | 埼玉県 | 81.44年 | 三重県 | 87.59年 |
| 25 | 佐賀県 | 81.41年 | 新潟県 | 87.57年 |
| 26 | 山形県 | 81.39年 | 鹿児島県 | 87.53年 |
| 27 | 福岡県 | 81.38年 | 愛知県 | 87.52年 |
| 28 | 鳥取県 | 81.34年 | 岐阜県 | 87.51年 |
| 29 | 新潟県 | 81.29年 | 宮城県 | 87.51年 |
| 30 | 徳島県 | 81.27年 | 千葉県 | 87.50年 |
| 31 | 宮崎県 | 81.15年 | 静岡県 | 87.48年 |
| 32 | 愛媛県 | 81.13年 | 山口県 | 87.43年 |
| 33 | 群馬県 | 81.13年 | 徳島県 | 87.42年 |
| 34 | 山口県 | 81.12年 | 長崎県 | 87.41年 |
| 35 | 和歌山県 | 81.03年 | 山形県 | 87.38年 |
| 36 | 長崎県 | 81.01年 | 大阪府 | 87.37年 |
| 37 | 栃木県 | 81.00年 | 和歌山県 | 87.36年 |
| 38 | 鹿児島県 | 80.95年 | 愛媛県 | 87.34年 |
| 39 | 北海道 | 80.92年 | 埼玉県 | 87.31年 |
| 40 | 茨城県 | 80.89年 | 群馬県 | 87.18年 |
| 41 | 大阪府 | 80.81年 | 秋田県 | 87.10年 |
| 42 | 高知県 | 80.79年 | 北海道 | 87.08年 |
| 43 | 沖縄県 | 80.73年 | 岩手県 | 87.05年 |
| 44 | 岩手県 | 80.64年 | 茨城県 | 86.94年 |
| 45 | 福島県 | 80.60年 | 栃木県 | 86.89年 |
| 46 | 秋田県 | 80.48年 | 福島県 | 86.81年 |
| 47 | 青森県 | 79.27年 | 青森県 | 86.33年 |
出典は厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」の表1[4]。表示が同じ値(たとえば男性の岡山県と岐阜県の81.90年)は、表示より下の桁で順位がつけられている。
男女ともに上位の県と、片方だけ上位の県
滋賀・長野・京都の3府県は、男女ともに4位以内に入った。滋賀県は男性1位・女性2位、長野県は男性2位・女性4位、京都府は男性4位・女性3位だ。
一方で、男女の順位が離れている県もある。奈良県は男性3位だが女性は11位、神奈川県は男性5位で女性15位。逆に、女性1位の岡山県は男性10位、女性6位の島根県は男性20位だった。いちばん差が大きいのは沖縄県で、女性16位に対して男性は43位だ。
東京都は男性14位(81.77年)、女性17位(87.86年)で、全国値はわずかに上回るが上位10には入らない。大阪府は男性41位、女性36位だった。都道府県別の平均年収ランキングで1位の東京都がここでは中ほどにいるように、所得の順位と平均寿命の順位は一致しない。
下位:青森県は46位とも1年以上離れている
男性の下位5県は、青森・秋田・福島・岩手・沖縄。女性は、青森・福島・栃木・茨城・岩手だった。東北の県が多く、女性では北関東の栃木県と茨城県も入る。
目立つのは、47位の青森県と46位との差だ。男性では46位の秋田県(80.48年)と青森県(79.27年)の間に1.21年の開きがある。1位から46位までの差は2.25年なので、全体の差3.46年のおよそ3分の1は、青森県と他県の間の差ということになる。女性でも、46位の福島県と青森県の差は0.48年あった。
男女の差:最も大きいのは沖縄の7.15年、最も小さいのは滋賀の5.53年
女性の平均寿命から男性の平均寿命を引いた男女差は、全国で6.11年。最も大きいのは沖縄県(7.15年)で、高知県(7.06年)、青森県(7.05年)が続く。最も小さいのは滋賀県(5.53年)、奈良県(5.54年)、長野県(5.55年)だった[4]。男性の平均寿命が長い県ほど、男女差が小さい傾向が見てとれる。
3. 年齢別に見ると順位が入れ替わる:沖縄の男性は0歳の43位から75歳では2位に
0歳の平均寿命は全ての年齢の死亡状況をまとめた数字。年齢を区切ると、違う顔が見えてくる。
都道府県別生命表には、0歳だけでなく20歳・40歳・65歳・75歳の平均余命(その年齢の人が、あと平均何年生きられるか)も載っている[5]。
| 年齢 | 男性の1位 | 男性の全国 | 女性の1位 | 女性の全国 |
|---|---|---|---|---|
| 0歳 | 滋賀県 82.73年 | 81.49年 | 岡山県 88.29年 | 87.60年 |
| 40歳 | 長野県 43.73年 | 42.43年 | 長野県 48.91年 | 48.26年 |
| 65歳 | 長野県 20.86年 | 19.89年 | 沖縄県 25.44年 | 24.77年 |
| 75歳 | 長野県 13.12年 | 12.47年 | 沖縄県 16.85年 | 16.12年 |
青森県は、男女ともどの年齢でも47位だった。65歳の平均余命は男性18.51年、女性23.92年で、全国より男性で1.38年、女性で0.85年短い。
沖縄県:働く世代の死亡が、0歳の数字を押し下げていると考えられる
順位の動きが最も大きいのは沖縄県の男性だ。0歳・20歳・40歳ではいずれも43位なのに、65歳では15位、75歳では2位(12.93年)まで上がる。女性も0歳では16位だが、65歳と75歳では1位になる。
0歳の平均寿命は、子どもから高齢者まで、全ての年齢の死亡率をまとめた数字だ。75歳の平均余命は、75歳まで生きた人のその後だけを表す。沖縄県で「高齢になってからの余命は全国トップ級なのに、0歳の平均寿命は下位」になっているのは、65歳より前の年齢での死亡が相対的に多く、それが0歳の数字を押し下げているためと考えられる。厚生労働省の概況も、75歳の順位が0歳より大きく上がる県として、沖縄・宮崎・鹿児島・高知を挙げている[4]。男性の鹿児島県は0歳38位から75歳13位へ、宮崎県は31位から12位へ、高知県は42位から24位へ上がった。
逆に下がる県:愛知・福井・富山・石川
反対に、男性の愛知県は0歳13位から75歳35位へ、福井県は7位から29位へ、富山県は15位から34位へ、石川県は6位から23位へ下がる。女性では、三重県が24位から40位へ、滋賀県が2位から14位へ下がった。
これらの県は、若い世代や働く世代の死亡率が低いことで0歳の平均寿命が押し上げられている一方、高齢になってからの余命は全国並み、と読むことができる。「長寿県」といっても、どの年齢で差がついているかは県によって違う。
4. 55年間の推移:滋賀は27位から1位へ、沖縄は1位から43位へ。青森は半世紀近く最下位
令和2年版の概況には、1965年(昭和40年)からの都道府県別の平均寿命が全て載っている[6]。この55年で、全国の平均寿命は男性で約14年、女性で約15年延びた。男女別に、各回の1位と最下位を並べた。
男性
| 年 | 全国 | 最も長い県 | 最も短い県 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 1965 | 67.74年 | 東京都 69.84年 | 青森県 65.32年 | 4.52年 |
| 1975 | 71.79年 | 東京都 73.19年 | 青森県 69.69年 | 3.50年 |
| 1985 | 74.95年 | 沖縄県 76.34年 | 青森県 73.05年 | 3.29年 |
| 1995 | 76.70年 | 長野県 78.08年 | 青森県 74.71年 | 3.37年 |
| 2005 | 78.79年 | 長野県 79.84年 | 青森県 76.27年 | 3.57年 |
| 2010 | 79.59年 | 長野県 80.88年 | 青森県 77.28年 | 3.60年 |
| 2015 | 80.77年 | 滋賀県 81.78年 | 青森県 78.67年 | 3.11年 |
| 2020 | 81.49年 | 滋賀県 82.73年 | 青森県 79.27年 | 3.46年 |
女性
| 年 | 全国 | 最も長い県 | 最も短い県 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 1965 | 72.92年 | 東京都 74.70年 | 秋田県 71.24年 | 3.46年 |
| 1975 | 77.01年 | 沖縄県 78.96年 | 秋田県 75.86年 | 3.10年 |
| 1985 | 80.75年 | 沖縄県 83.70年 | 大阪府 79.84年 | 3.86年 |
| 1995 | 83.22年 | 沖縄県 85.08年 | 兵庫県 81.83年 | 3.25年 |
| 2005 | 85.75年 | 沖縄県 86.88年 | 青森県 84.80年 | 2.08年 |
| 2010 | 86.35年 | 長野県 87.18年 | 青森県 85.34年 | 1.84年 |
| 2015 | 87.01年 | 長野県 87.67年 | 青森県 85.93年 | 1.74年 |
| 2020 | 87.60年 | 岡山県 88.29年 | 青森県 86.33年 | 1.96年 |
1965年は沖縄県を含まない46都道府県の値だ。1995年の兵庫県は阪神・淡路大震災の影響を受けている(影響を除いた場合の女性の値は82.68年)[6]。2015年の女性は長野県と岡山県がともに87.67年で、表示より下の桁(87.675年と87.673年)で長野県が1位になった[2]。
過去の版で上位3位を見ると、2010年は男性が長野県(80.88年)・滋賀県(80.58年)・福井県(80.47年)、女性が長野県(87.18年)・島根県(87.07年)・沖縄県(87.02年)だった[10]。2015年は男性が滋賀県(81.78年)・長野県(81.75年)・京都府(81.40年)で[9]、女性が長野県・岡山県(ともに87.67年)・島根県(87.64年)だった。上位の顔ぶれは、10年でかなり入れ替わっている。
順位が大きく動いた県
- 滋賀県(男性):1965年は27位。2005年と2010年に2位、2015年と2020年は1位になった。女性も1965年の31位から2020年は2位へ上がっている。
- 長野県(男性):12回すべてで10位以内に入った。1990年から2010年までは5回続けて1位だった。男性で毎回10位以内に入ったのは、長野県と神奈川県の2県だけだ[6]。
- 岡山県(女性):女性で毎回10位以内に入ったのは岡山県だけだ。1970年にも1位だったが、2020年は50年ぶりの1位になった。
- 沖縄県:男性は1980年と1985年に1位だったが、2000年に26位、2020年には43位まで下がった。女性は1975年から2005年まで7回続けて1位だったが、2010年3位、2015年7位、2020年16位と順位を下げている。
- 青森県:男性は1975年から10回続けて47位。女性も2000年から5回続けて47位だ。
- 東京都:1965年は男女とも1位だったが、2020年は男性14位、女性17位。
2015年から2020年:全ての都道府県で延びた
2015年から2020年にかけて、平均寿命は男女とも全ての都道府県で延びた[6]。全国の延びは男性0.72年、女性0.60年。
延びが大きかったのは、男性では鳥取県(1.17年)、富山県(1.13年)、和歌山県(1.09年)、女性では京都府(0.89年)、和歌山県(0.88年)、兵庫県(0.84年)。小さかったのは、男性の沖縄県(0.46年)、女性の新潟県(0.25年)だった。青森県は男性0.61年、女性0.39年延びたが、延び幅は全国より小さく、他県との差は縮まらなかった。
最長と最短の差は、いったん縮まってまた広がった
1位と最下位の差は、長い目で見ると縮まってきた。男性は1965年の4.52年から2015年の3.11年へ、女性は1985年の3.86年から2015年の1.74年へ小さくなった。ところが2020年は、男性が3.11年から3.46年へ、女性が1.74年から1.96年へと、どちらも前回より広がった。1位の値は男性で81.78年(滋賀県)から82.73年(滋賀県)へ、女性で87.67年(長野県)から88.29年(岡山県)へ上がったのに対し、最下位の青森県の延びは男性0.61年、女性0.39年と全国より小さかったためだ。
5. 健康寿命と比べる:平均寿命の長い県と、元気に過ごせる期間が長い県は同じではない
健康寿命は「日常生活に制限のない期間の平均」。何年生きるかとは別の物差しだ。
平均寿命とあわせてよく使われるのが、健康寿命(日常生活に制限のない期間の平均)だ。国の健康づくり計画「健康日本21(第三次)」では、厚生労働科学研究班が計算した令和4年(2022年)の値を基準値にしている[17]。
全国の健康寿命は、男性72.57年、女性75.45年。同じ年の平均寿命(男性81.05年、女性87.09年)との差、つまり日常生活に何らかの制限がある期間の平均は、男性8.49年、女性11.63年だった。前回の2019年の値(男性72.68年、女性75.38年)と比べて、統計的に意味のある差は見られなかったとされている[17]。
都道府県の健康寿命:1位は男女とも静岡県
| 区分 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 1位 | 静岡県 73.75年 | 静岡県 76.68年 |
| 2位 | 石川県 73.60年 | 山口県 76.43年 |
| 3位 | 山梨県 73.47年 | 岐阜県 76.20年 |
| 全国 | 72.57年 | 75.45年 |
| 下から3番目 | 沖縄県 71.62年 | 神奈川県 74.71年 |
| 下から2番目 | 高知県 71.19年 | 沖縄県 74.33年 |
| 最も短い | 岩手県 70.93年 | 岩手県 74.28年 |
平均寿命の上位県は、健康寿命では必ずしも上位ではない。平均寿命が男性1位の滋賀県は、健康寿命では男性73.19年で上位に入るが、長野県の男性は72.73年で中ほど。女性1位の岡山県は75.67年、滋賀県は75.82年で、どちらも上位3県とは差がある[17]。
反対に、平均寿命が男女とも最も短い青森県は、男性の健康寿命が72.03年で、全国(72.57年)をやや下回る程度だ。男性で「日常生活に制限のある期間」が最も短いのは青森県の7.14年で、最も長い兵庫県(9.48年)、長野県(9.47年)、京都府(9.44年)より2年以上短い。女性で制限のある期間が最も短いのは静岡県の10.31年、最も長いのは神奈川県の12.99年だった[17]。
健康寿命の順位は、細かく比べすぎない
健康寿命は、国民生活基礎調査の回答と死亡の統計を組み合わせて推計した値で、計算上の誤差を含む。資料では、数値を比べるときは95%信頼区間も考慮する必要があると注意している[17]。
たとえば男性1位の静岡県の95%信頼区間は73.22〜74.27年、最も短い岩手県は70.11〜71.76年で、上と下ははっきり違うと言える。しかし中ほどの県どうしは区間が重なることが多く、順位の数番の違いには大きな意味がない。実際、青森県の女性は2019年の76.05年から2022年は75.02年へ、京都府の女性は73.68年から75.78年へと、1回で1年以上動いている。
なお、ここでの健康寿命は2022年の値で、都道府県別生命表(2019〜2021年の死亡状況)とは年も計算方法も違う。県ごとの「平均寿命−健康寿命」を、この記事の表どうしで引き算して求めることはしていない。
国の目標は「健康寿命の延び」と「県の差の縮小」
健康日本21(第三次)は、令和6〜17年度の計画で、次の2つを目標にしている[17]。
- 健康寿命の延伸:平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加
- 健康格差の縮小:健康寿命の上位4分の1の都道府県の平均の増加分を上回る、下位4分の1の都道府県の平均の増加
基準となる2022年の値では、上位4分の1の平均が男性73.27年、女性76.12年、下位4分の1の平均が男性71.75年、女性74.77年で、その差は男性1.51年、女性1.35年だ。2028年の値で中間評価、2031年の値で最終評価をする予定になっている。
6. 差の背景として考えられることと、数字を読むときの注意
県ごとの差の理由は一つではない。統計からわかることと、わからないことを分けて見たい。
死因の構成:青森県はがんで亡くなる確率が高め
都道府県別生命表には、生まれた人が将来どの死因で亡くなるかを確率で表した「死因別死亡確率」も載っている[7]。これは生命表の上での計算で、実際の死亡の割合とは異なる。
| 項目 | 全国 | 青森県 | 長野県 | 滋賀県 |
|---|---|---|---|---|
| 男性・悪性新生物(がん) | 28.13% | 29.69% | 26.17% | 28.27% |
| 男性・脳血管疾患 | 7.03% | 7.90% | 8.08% | 6.24% |
| 男性・自殺 | 1.72% | 2.16% | 1.91% | 1.73% |
| 男性・老衰 | 6.92% | 5.46% | 8.79% | 7.25% |
| 女性・悪性新生物(がん) | 20.05% | 21.26% | 19.27% | 19.48% |
| 女性・老衰 | 17.69% | 15.94% | 19.85% | 17.43% |
青森県は、がんで亡くなる確率が男性で4番目、女性で3番目に高く、男性の自殺の確率も全国で2番目に高い。がんがなくなったと仮定した場合に平均寿命がどれだけ延びるかという計算でも、青森県の男性は3.85年(全国3.51年)、女性は3.13年(全国2.84年)と全国より大きい[8]。青森県の平均寿命の短さには、がんを中心に、比較的若い年齢での死亡が多いことが関わっていると考えられる。
一方、長野県は老衰で亡くなる確率が男女とも全国より高い。ただし、これは「長野県では老衰が多いから長生き」という意味ではない。長生きする人が多ければ、高齢で老衰により亡くなる人の割合も自然と高くなる。死亡確率は、死因の「配分」を表した数字であることに注意したい。
統計からわからないこと
県ごとの差の背景としては、食生活、喫煙や飲酒、運動の習慣、健診の受け方、医療へのアクセス、仕事や所得など、さまざまな要因が考えられる。しかし、この記事で使った生命表は死亡の状況を表すもので、どの要因がどれだけ効いているかまでは示していない。「この県は〇〇を食べるから長寿」のような一つの理由で説明できるものではなく、因果関係を確かめるには別の研究が必要だ。
「その県に住めば長生きできる」わけではない
平均寿命は、その県に住む人たちの死亡状況をまとめた数字で、移り住んだ人の寿命が変わることを示すものではない。また、0.01年は約3.7日にあたる。女性の1位と5位の差(0.07年)は1か月に満たず、上位の細かい順位の違いを大きな差と受け取らないほうがいい。
自分や家族のことを考えるなら、県の順位よりも、全国の年齢別の数字のほうが役に立つ。令和7年簡易生命表では、65歳の平均余命は男性19.68年、女性24.52年。75歳でも男性12.24年、女性15.88年ある[14]。65歳まで生きる人の割合は男性89.9%、女性94.5%だ[15]。
この記事は公表された統計を紹介するもので、医療や健康上の助言ではありません。健康について気になることがある場合は、医師や自治体の窓口に相談してください。数値は2026年10月時点で公表されている統計によります。
参考文献・出典
- [1]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」(2022年12月23日公表)。厚生労働省 ↩
- [2]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表を公表します」報道発表資料(2022年12月23日)。厚生労働省 ↩
- [3]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」都道府県別生命表について(生命表の種類、基礎資料、全国値の扱い)。厚生労働省 ↩
- [4]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」1 都道府県別にみた平均余命(表1 平均寿命、表2 主な年齢の平均余命、表3 男女差)。厚生労働省 ↩
- [5]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」統計表 表1 主な年齢の平均余命。厚生労働省 ↩
- [6]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」統計表 表2 平均寿命の年次推移(昭和40年〜令和2年)。厚生労働省 ↩
- [7]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」参考1 死因別死亡確率。厚生労働省 ↩
- [8]厚生労働省「令和2年都道府県別生命表の概況」参考2 特定死因を除去した場合の平均寿命の延び。厚生労働省 ↩
- [9]厚生労働省「平成27年都道府県別生命表の概況」。厚生労働省 ↩
- [10]厚生労働省「平成22年都道府県別生命表の概況」。厚生労働省 ↩
- [11]厚生労働省「生命表(加工統計)結果の概要」(簡易生命表・完全生命表・都道府県別生命表の公表一覧)。厚生労働省 ↩
- [12]厚生労働省「第23回生命表(完全生命表)の概況」(2022年3月2日公表)。厚生労働省 ↩
- [13]厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」(2026年7月24日公表)および報道発表資料。厚生労働省 ↩
- [14]厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命。厚生労働省 ↩
- [15]厚生労働省「令和7(2025)年簡易生命表の概況」2 寿命中位数等生命表上の生存状況。厚生労働省 ↩
- [16]厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」1 主な年齢の平均余命。厚生労働省 ↩
- [17]厚生労働省 健康・生活衛生局健康課「健康寿命の令和4年値について」第4回健康日本21(第三次)推進専門委員会 資料1-1(2024年12月24日)。健康寿命は厚生労働科学研究「次期健康づくり運動プラン作成と推進に向けた研究」(研究代表者 辻一郎)による算出。厚生労働省 ↩

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