目次
合計特殊出生率は、ニュースでは「全国で過去最低」という形で伝えられることが多い。では、都道府県ごとに見るとどのくらい違うのか。高い県と低い県の差は昔と比べて広がったのか、縮まったのか。東京都が毎年最も低いのはなぜなのか。
この記事では、厚生労働省の「人口動態統計」から、47都道府県の合計特殊出生率を並べた[1][9]。2025年の都道府県別の値は2026年6月に公表された概数で、確定値はまだ出ていない(理由は後で説明する)。前年からの変化、1947年からの全国の推移、地域差の移り変わり、出生数、そして数字から読み取れることと読み取れないことを順に見ていく。子どもを持つかどうか、何人持つかは一人ひとりが決めることで、ここで扱うのは、ある年の出生の状況をまとめた統計の数字だ。
1. 結論:最も高いのは沖縄県の1.52、最も低いのは東京都の0.96
- 全国の合計特殊出生率は1.14(2025年)。 前の年の1.15より0.01下がり、統計のある1947年以降で最も低い。下がるのは10年連続だ[7]。
- 都道府県別で最も高いのは沖縄県(1.52)、続いて宮崎県(1.46)、福井県(1.45)。 最も低いのは東京都(0.96)で、北海道と宮城県(1.00)が続く[2]。
- 西日本、とくに九州と中国・四国に高い県が多く、首都圏と北海道・東北に低い県が多い。 全国(1.14)を上回ったのは33県で、同じ値が2県、下回ったのは12都道府県だった。
- 前年より上がったのは13県、下がったのは28道府県、同じ値が6都県。 0.01〜0.07の小さな動きが多く、1年の上下より数年の流れで見たい。
- 2025年の都道府県別の値は概数。 確定値は2025年の国勢調査の人口を使って計算し直し、2026年11月に公表される予定で、数字が変わる可能性がある[6]。
合計特殊出生率とは:15〜49歳の年齢ごとの出生率を足したもの
合計特殊出生率は、その年の15〜49歳の女性の年齢別の出生率を合計したものだ。「一人の女性が、その年の年齢別出生率のとおりに一生の間に子どもを生むとしたときの子どもの数」にあたる[5]。
人数そのものではなく、年齢ごとの「率」を足し合わせているので、女性の人口の年齢構成の違いを除いて、年どうし・地域どうしを比べられる。厚生労働省も、年次比較、国際比較、地域比較に使う指標と説明している[5]。都道府県別の値は、母の年齢5歳階級ごとの出生率を5倍して合計している(2015年と2020年は各歳の合計)[9]。
数字の対象は日本における日本人の出生で、都道府県は子の住所で分けている[8]。
2025年の都道府県別は、まだ「概数」
人口動態統計には、毎年6月ごろに出る「概数」と、9月ごろに出る「確定数」がある。2025年分の確定数は2026年9月30日に公表されたが、人口を分母に使う率は、全国の総数を除いて公表が見送られた。2025年に行われた国勢調査の人口で計算し直すためで、都道府県別の合計特殊出生率などは2026年11月に公表される予定になっている[6]。
そこでこの記事では、2025年の都道府県別の値に、6月3日に公表された概数を使った[2]。概数の分母の人口は、総務省統計局の資料をもとに厚生労働省が推計したもので、確定値では数字が変わる可能性がある[1]。2024年以前の値は確定数だ[9]。全国の1.14は、概数と確定数の概況のどちらでも同じ値になっている[7]。
全国の最新値:1.14、出生数は67万1270人
2025年に生まれた子ども(日本における日本人)は67万1270人で、前の年より1万4903人(2.2%)少なかった[7]。1899年に統計を取り始めてから最も少なく、減るのは10年連続だ。ただし、近年の5%前後の減少と比べると、減り方は小さくなった[6]。
2. 47都道府県ランキング:上位は九州と中国・四国、北陸。下位は首都圏と北海道・東北
| 順位 | 都道府県 | 2025年(概数) | 2024年(順位) |
|---|---|---|---|
| ― | 全国 | 1.14 | 1.15 |
| 1 | 沖縄県 | 1.52 | 1.54(1位) |
| 2 | 宮崎県 | 1.46 | 1.43(3位) |
| 3 | 福井県 | 1.45 | 1.46(2位) |
| 4 | 長崎県 | 1.42 | 1.39(7位) |
| 5 | 島根県 | 1.41 | 1.43(3位) |
| 6 | 香川県 | 1.40 | 1.36(11位) |
| 6 | 熊本県 | 1.40 | 1.39(7位) |
| 8 | 鳥取県 | 1.38 | 1.43(3位) |
| 8 | 佐賀県 | 1.38 | 1.41(6位) |
| 8 | 鹿児島県 | 1.38 | 1.38(9位) |
| 11 | 滋賀県 | 1.34 | 1.32(13位) |
| 12 | 徳島県 | 1.33 | 1.32(13位) |
| 12 | 大分県 | 1.33 | 1.37(10位) |
| 14 | 山口県 | 1.32 | 1.36(11位) |
| 15 | 富山県 | 1.31 | 1.29(16位) |
| 16 | 石川県 | 1.30 | 1.23(25位) |
| 17 | 高知県 | 1.29 | 1.25(22位) |
| 18 | 愛媛県 | 1.28 | 1.28(18位) |
| 19 | 広島県 | 1.27 | 1.29(16位) |
| 20 | 三重県 | 1.26 | 1.24(23位) |
| 21 | 長野県 | 1.25 | 1.30(15位) |
| 22 | 和歌山県 | 1.24 | 1.24(23位) |
| 23 | 山梨県 | 1.23 | 1.26(21位) |
| 23 | 岐阜県 | 1.23 | 1.27(19位) |
| 23 | 兵庫県 | 1.23 | 1.23(25位) |
| 23 | 岡山県 | 1.23 | 1.27(19位) |
| 27 | 静岡県 | 1.21 | 1.19(30位) |
| 27 | 福岡県 | 1.21 | 1.22(27位) |
| 29 | 愛知県 | 1.20 | 1.22(27位) |
| 30 | 群馬県 | 1.18 | 1.20(29位) |
| 31 | 奈良県 | 1.17 | 1.19(30位) |
| 32 | 山形県 | 1.15 | 1.17(32位) |
| 32 | 茨城県 | 1.15 | 1.16(33位) |
| 34 | 福島県 | 1.14 | 1.15(34位) |
| 34 | 栃木県 | 1.14 | 1.15(34位) |
| 36 | 新潟県 | 1.13 | 1.14(36位) |
| 36 | 大阪府 | 1.13 | 1.14(36位) |
| 38 | 岩手県 | 1.12 | 1.09(39位) |
| 39 | 青森県 | 1.10 | 1.14(36位) |
| 40 | 千葉県 | 1.07 | 1.09(39位) |
| 41 | 埼玉県 | 1.06 | 1.09(39位) |
| 42 | 秋田県 | 1.05 | 1.04(44位) |
| 42 | 神奈川県 | 1.05 | 1.08(42位) |
| 44 | 京都府 | 1.03 | 1.05(43位) |
| 45 | 北海道 | 1.00 | 1.01(45位) |
| 45 | 宮城県 | 1.00 | 1.00(46位) |
| 47 | 東京都 | 0.96 | 0.96(47位) |
出典は、2025年が厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)」第9表[2]、2024年が「人口動態統計(確定数)」上巻 出生 第4.5表[9]。順位は高い順で、同じ値は同順位にした。前年(2024年)の順位も同じ方法でつけている。
上位:九州・沖縄の6県と、中国・四国、北陸が並ぶ
上位10県は、沖縄県(1.52)、宮崎県(1.46)、福井県(1.45)、長崎県(1.42)、島根県(1.41)、香川県・熊本県(1.40)、鳥取県・佐賀県・鹿児島県(1.38)。九州・沖縄の8県のうち、福岡県と大分県を除く6県が入る。1.5以上は沖縄県だけで、1.3以上は16県だった。
下位:首都圏の1都3県と、北海道・東北、京都府
下位は、東京都(0.96)、北海道・宮城県(1.00)、京都府(1.03)、秋田県・神奈川県(1.05)、埼玉県(1.06)、千葉県(1.07)、青森県(1.10)。1.1を下回るのは8都道府県で、首都圏の1都3県がすべて含まれる。大阪府(1.13)と愛知県(1.20)は、東京都ほど低くない。
地方ごとに見ると、西ほど高い
地方ごとに、属する都道府県の値を単純に平均してみた(人口で重みづけをしていない、この記事での参考の計算。三重県は近畿に含めた)。
- 九州・沖縄:1.39
- 中国:1.32、四国:1.32
- 中部:1.26
- 近畿:1.20
- 関東:1.09
- 北海道・東北:1.08
おおまかには西へ行くほど高く、東日本と大都市圏で低い。ただし、近畿でも滋賀県(1.34)は11位、中部でも北陸の3県(富山・石川・福井)は16位以内に入っていて、同じ地方の中でも差がある。
3. 前年からの変化:上がったのは13県。小さな県ほど1年の動きは大きい
2024年(確定数)から2025年(概数)にかけて、合計特殊出生率が上がったのは13県だった[4]。
- 上がった13県:石川県(1.23→1.30)、香川県・高知県(0.04上昇)、岩手県・長崎県・宮崎県(0.03上昇)、富山県・静岡県・三重県・滋賀県(0.02上昇)、秋田県・徳島県・熊本県(0.01上昇)
- 同じ値の6都県:宮城県、東京都、兵庫県、和歌山県、愛媛県、鹿児島県
- 下がった28道府県:下げ幅が大きいのは長野県・鳥取県(0.05低下)、青森県・岐阜県・岡山県・山口県(0.04低下)
石川県は2024年に1.23まで下がり、2025年は1.30に戻った。2024年1月の能登半島地震のあった年の値が下がり、翌年に戻った形だが、統計からは地震との関係まではわからない。2024年に3位だった鳥取県は、1.43から1.38に下がって8位になった。
出生数の少ない県は、毎年の値が揺れやすい
合計特殊出生率は率なので、出生数の多い少ないとは別に計算される。ただし、もとになる出生数が少ないと、たまたまの増減で値が動きやすい。2025年の出生数は、東京都の8万5090人に対し、最も少ない鳥取県は2973人、高知県は3079人、秋田県は3148人、島根県は3339人だった[11]。
毎年の値がそろう2007〜2025年について、前年からの変化の大きさ(絶対値)を平均すると、大きいのは高知県(0.053)、鳥取県・島根県(0.052)、沖縄県(0.047)。小さいのは新潟県(0.024)、愛媛県(0.026)、大阪府・北海道(0.027)、兵庫県(0.028)だった。出生数の少ない県ほど揺れやすい傾向はあるが、それだけで決まるわけでもない。
3年分をならしても、上と下の顔ぶれはほぼ同じ
1年だけの振れを除くため、2023〜2025年の3年分の値を単純に平均してみた(2023・2024年は確定数、2025年は概数。この記事での参考の計算)。
- 高い県:沖縄県(1.55)、宮崎県・福井県(1.46)、島根県・長崎県(1.43)、熊本県(1.42)
- 低い県:東京都(0.97)、北海道・宮城県(1.02)、秋田県・京都府(1.06)、神奈川県(1.09)
1位の沖縄県と47位の東京都は3年とも変わらず、上位と下位の顔ぶれは1年分のランキングとほぼ同じだった。一方で、中ほどの県の数番の違いには、大きな意味はない。
4. 東京都は最も低いのに、生まれる子どもの約8人に1人は東京都
東京都の合計特殊出生率は全国で最も低いが、2025年に生まれた子どもの12.7%は東京都の子どもだった。
東京都の合計特殊出生率は0.96で、統計のある年のほとんどで最も低い。それでも、2025年に東京都で生まれた子どもは8万5090人で、全国の12.7%、およそ8人に1人を占める[11]。2位の大阪府(5万2598人)、3位の神奈川県(5万209人)を大きく上回る。
さらに、2025年に出生数が前の年より増えたのは、東京都(883人増)、石川県(164人増)、富山県(47人増)、香川県(44人増)の4都県だけだった。残りの43道府県では減っている。20年前の2005年と比べると、全国の出生数は63.2%の水準まで減ったが、東京都は88.1%で、47都道府県の中で最も減り方が小さい。最も減ったのは秋田県の40.9%だった。
人口あたりの出生率では、東京都は4位
合計特殊出生率とは別に、人口千人あたりの出生数を表す「出生率」という指標がある。2025年の概数で見ると、全国は5.6で、高いのは沖縄県(8.0)、滋賀県・福岡県(6.4)、そして東京都(6.3)が4位に入る[2]。最も低いのは秋田県(3.6)で、合計特殊出生率は42位(1.05)だ。
同じ東京都が、一方の指標では4位、もう一方では47位になる。人口千人あたりの出生率は、子どもを生む年代の人がどれだけ住んでいるかで大きく変わる。進学や就職で若い世代が多く集まる東京都は、人口に占める20〜30代が多いぶん、出生率が高くなる。合計特殊出生率は年齢ごとの率を足しているので、こうした年齢構成の違いを取り除いた数字になっている[5]。
年齢構成を除いても残る「結婚している人の割合」の違い
ただし、合計特殊出生率が取り除くのは年齢構成だけだ。その年齢の女性のうち、結婚している人がどれだけいるかの違いは、そのまま数字に残る。
日本では、2025年に生まれた子どもの97.3%が、結婚している父母の子(嫡出子)だった[12]。このため、20〜30代で結婚している人の割合が低い地域ほど、合計特殊出生率は低く出やすい。都道府県別の平均初婚年齢で見たように、東京都は平均初婚年齢が男女とも全国で最も高く(夫32.0歳、妻30.6歳)[14]、第1子が生まれたときの母の平均年齢も32.5歳で最も高い(全国31.0歳)[13]。
また、東京都で働き、結婚や出産を機に神奈川・埼玉・千葉などへ移る人がいれば、東京都の数字には若い独身の時期だけが、周辺の県には子育ての時期だけが入ることになる。こうした移動がどの程度影響しているかは、人口動態統計だけでは確かめられない。東京都の0.96という数字は、「東京都で暮らす女性が一生のうちに生む子どもの数」とは、必ずしも一致しない。
5. 1947年からの推移:4.54から1.14へ。2016年からは10年続けて低下
全国の合計特殊出生率は、1947年の4.54から2025年の1.14まで、約80年で大きく変わった。
全国の合計特殊出生率は、戦後の1947年に4.54だった[10]。1950年代に急速に下がり、1960年代から1970年代前半は、1966年を除いて2前後で推移した。1975年に2を下回ってから下がり続け、2005年に1.26まで下がった。その後は少し上がって2015年に1.45となったが、2016年から再び下がり、2025年の1.14まで10年続けて低下している[7]。
| 年 | 合計特殊出生率 | 出生数 |
|---|---|---|
| 1947 | 4.54 | 267万8792人 |
| 1950 | 3.65 | 233万7507人 |
| 1960 | 2.00 | 160万6041人 |
| 1966 | 1.58 | 136万974人 |
| 1973 | 2.14 | 209万1983人 |
| 1975 | 1.91 | 190万1440人 |
| 1989 | 1.57 | 124万6802人 |
| 2005 | 1.26 | 106万2530人 |
| 2015 | 1.45 | 100万5721人 |
| 2020 | 1.33 | 84万835人 |
| 2024 | 1.15 | 68万6173人 |
| 2025 | 1.14 | 67万1270人 |
出典は確定数 上巻 出生 第4.1表[10]。2025年の合計特殊出生率は確定数の概況による[7]。1947〜1972年は沖縄県を含まない。
1966年は丙午(ひのえうま)の年にあたり、出生数が前の年より約46万人少なかった。合計特殊出生率も1.58に下がったが、前後の年は2を超えている。1989年の1.57は、この1966年の値を下回った。出生数は1949年の269万6638人が最も多く、1973年の209万1983人が戦後2度目の山になった。2016年に100万人を下回り、2025年は1973年の32.1%にあたる。
出生率が最も高い年齢は、20代後半から30代前半へ
年齢ごとの内訳を見ると、出生の中心は年々上の年齢へ移っている。1985年には25〜29歳の出生率(0.89)が最も高く、30〜34歳(0.44)の約2倍だった。2025年は30〜34歳(0.44)が最も高く、25〜29歳(0.30)を上回る[3]。2025年に前の年より上がった年齢層は30〜34歳だけで、この年齢層の出生数も前年より2221人増えた。
第1子が生まれたときの母の平均年齢は、1975年の25.7歳から2025年は31.0歳になり、2023年からは3年続けて31.0歳だった[3]。
6. 地域差の移り変わり:沖縄県は1975年から毎回1位、東京都はほぼ毎回47位
都道府県別の値は、1960年から2005年までは5年ごと、2007年からは毎年公表されている(沖縄県は1975年から)[9]。主な年について、最も高い県と最も低い県を並べた。
| 年 | 全国 | 最も高い県 | 最も低い県 | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 1960 | 2.00 | 長崎県 2.72 | 東京都 1.70 | 1.02 |
| 1975 | 1.91 | 沖縄県 2.88 | 東京都 1.63 | 1.25 |
| 1990 | 1.54 | 沖縄県 1.95 | 東京都 1.23 | 0.72 |
| 2005 | 1.26 | 沖縄県 1.72 | 東京都 1.00 | 0.72 |
| 2015 | 1.45 | 沖縄県 1.96 | 東京都 1.24 | 0.72 |
| 2020 | 1.33 | 沖縄県 1.83 | 東京都 1.12 | 0.71 |
| 2024 | 1.15 | 沖縄県 1.54 | 東京都 0.96 | 0.58 |
| 2025 | 1.14 | 沖縄県 1.52 | 東京都 0.96 | 0.56 |
沖縄県は、統計に加わった1975年から2025年まで、公表された全ての年で1位だった。東京都は、1965年(最も低いのは富山県)と1970年(秋田県)を除き、1960年以降の全ての年で最も低い。1970年に最も高かったのは埼玉県(2.35)で、当時は首都圏の郊外が高い側にいた。
最高と最低の差は縮んだが、ばらつき全体はあまり変わらない
最も高い県と低い県の差は、1975年の1.25から、1990〜2020年は0.7〜0.8程度、2025年は0.56になり、沖縄県が加わった1975年以降で最も小さい。ただしこれは主に、1位の沖縄県の値が下がったためだ。47都道府県の値のばらつき(標準偏差)は、1985年以降0.12〜0.15の範囲にあり、大きくは変わっていない。
この10年は、全ての都道府県で下がった
全国が1.45だった2015年と比べると、2025年は全ての都道府県で値が下がった(全国は0.31低下)。下げ幅が大きいのは福島県・沖縄県(0.44低下)、岩手県・愛知県・島根県(0.37低下)、宮城県(0.36低下)。小さいのは福井県(0.18低下)、徳島県・富山県(0.20低下)、奈良県(0.21低下)、高知県(0.22低下)だった。
順位で見ると、この10年で上がったのは富山県(27位→15位)、徳島県(24位→12位)、高知県(27位→17位)、奈良県(41位→31位)、兵庫県(33位→23位)など。下がったのは福島県(15位→34位)、愛知県(17位→29位)、岩手県(30位→38位)、広島県(12位→19位)などだ。
さらに20年前の2005年と比べると、全国は1.26から1.14へ0.12下がり、上がったのは徳島県(1.26→1.33)だけだった。下げ幅が大きいのは福島県(0.35低下)、山形県(0.30低下)、岩手県・秋田県(0.29低下)で、東北の県が並ぶ。
7. 結婚・出産の年齢との関係:初婚年齢が高い県ほど、合計特殊出生率は低い
県ごとの数字の違いは、結婚や出産の年齢、住まいや仕事、人の移動など、多くの事情が重なった結果として表れる。
都道府県別の平均初婚年齢と並べると、県ごとの傾向がよく似ていることがわかる。2025年の47都道府県の値で相関係数を計算すると、妻の平均初婚年齢とはマイナス0.71、第1子が生まれたときの母の平均年齢ともマイナス0.71だった(この記事での計算)[14][13]。初婚や第1子の年齢が高い県ほど、合計特殊出生率は低い傾向がある。
たとえば、第1子出生時の母の平均年齢は、東京都の32.5歳が最も高く、宮崎県の29.5歳が最も低い。沖縄県は30.2歳、福井県は30.4歳で、全国(31.0歳)より若い[13]。
ただし、相関は「一方が原因でもう一方が決まる」ことを示すものではない。結婚や出産の年齢と合計特殊出生率は、どちらも住まいや仕事、通勤、進学、地域への人の出入りなど、共通の事情の影響を受けている可能性がある。この統計だけでは、何がどれだけ効いているかはわからない。
8. 数字を読むときの注意:合計特殊出生率からわかること、わからないこと
「一人の女性が生む子どもの数」そのものではない
ふだん使われる合計特殊出生率は「期間合計特殊出生率」と呼ばれ、ある1年間の年齢ごとの出生率を、別々の世代から集めて足したものだ。実際に同じ世代の女性が一生のうちに生んだ子どもの数(コーホート合計特殊出生率)は、その世代が50歳になるまでわからない[5]。
結婚や出産の年齢が上がっている時期には、2つの値はずれる。厚生労働省のごく粗い計算では、1986〜1990年生まれの世代(2025年に35〜39歳)は、2025年までに1.36に達していて、2025年の期間合計特殊出生率(1.14)を上回っている[5]。
2025年の都道府県別の値は、11月に変わる可能性がある
この記事の2025年の都道府県別の値は概数だ。確定値は、2025年の国勢調査の人口を分母にして計算し直し、2026年11月に公表される予定になっている[6]。同じ値の県が多いので、分母の人口が変わって値が0.01動くだけでも、順位は入れ替わりうる。
都道府県は子の住所。日本人だけが対象
出生は子の住所で都道府県に分けている。里帰り出産で別の県の病院で生まれても、子の住所の県に数えられる。また、対象は日本における日本人で、日本国籍でない子の出生は含まれない[8]。
地域差の理由は、この統計だけではわからない
県ごとの違いの背景には、結婚や出産の年齢、住まいの広さや費用、仕事や通勤、親族との距離、進学や就職での移動など、さまざまな事情が考えられる。しかし人口動態統計は、届け出られた出生の数と、それを人口で割った率を示すもので、理由までは示していない。一つの要因で説明できるものではない。
数字は、比べるための目安ではない
合計特殊出生率は、地域や時代ごとの出生の状況を知るための統計だ。子どもを持つかどうか、いつ、何人持つかは、一人ひとりの事情と選択による。住んでいる県の数字と自分や身近な人を比べる必要はない。
都道府県別の平均初婚年齢や都道府県別の平均寿命でも、それぞれの公的統計から地域ごとの違いを見ている。
この記事は公表された統計を紹介するもので、結婚、出産や家族の形について何かを勧めるものではありません。数値は2026年10月時点で公表されている厚生労働省「人口動態統計」によります。2025年の都道府県別の合計特殊出生率と出生率(人口千対)は概数で、確定値は2026年11月に公表予定です。地方ごとの平均、3年平均、前年からの変化の平均、相関係数は、公表値をもとにこの記事で計算したものです。
参考文献・出典
- [1]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」(2026年6月3日公表)。厚生労働省 ↩
- [2]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」統計表 第9表 人口動態総覧(率),都道府県(特別区-指定都市再掲)別(出生率、合計特殊出生率)。厚生労働省(PDF) ↩
- [3]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」結果の概要(図表2-2 母の年齢別の出生数、図表2-3 第1子出生時の母の平均年齢、図表2-4 母の年齢別の合計特殊出生率の内訳)。厚生労働省(PDF) ↩
- [4]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)を公表します」報道発表資料(2026年6月3日。都道府県別の合計特殊出生率は13県で上昇)。厚生労働省(PDF) ↩
- [5]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」参考1 合計特殊出生率について(期間合計特殊出生率とコーホート合計特殊出生率)。厚生労働省(PDF) ↩
- [6]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計(確定数)を公表します」報道発表資料(2026年9月30日。人口を分母に用いる諸率は全国の総数のみ公表し、詳細は2026年11月公表予定)。厚生労働省(PDF) ↩
- [7]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計(確定数)の概況」結果の概要(出生数67万1270人、合計特殊出生率1.14)。厚生労働省(PDF) ↩
- [8]厚生労働省「令和7(2025)年人口動態統計(確定数)の概況」調査の概要(集計の対象、都道府県別の表章は出生は子の住所による)。厚生労働省(PDF) ↩
- [9]厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和6年 上巻 出生 第4.5表 都道府県別にみた年次別合計特殊出生率(e-Stat)。e-Stat(CSV) ↩
- [10]厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和7年 上巻 出生 第4.1表 年次別にみた出生数・出生率(人口千対)・出生性比及び合計特殊出生率(e-Stat、2026年9月30日公開)。e-Stat(CSV) ↩
- [11]厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和7年 上巻 出生 第4.3表 都道府県別にみた年次別出生数(e-Stat、2026年9月30日公開)。e-Stat(CSV) ↩
- [12]厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和7年 上巻 出生 第4.29表 嫡出子-嫡出でない子別にみた年次別出生数及び百分率(e-Stat、2026年9月30日公開)。e-Stat(CSV) ↩
- [13]厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和7年 上巻 出生 第4.21表 出生順位別にみた都道府県(特別区-指定都市再掲)別父母の平均年齢(e-Stat、2026年9月30日公開)。e-Stat(CSV) ↩
- [14]厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和7年 上巻 婚姻 第9.12表-2 都道府県別にみた年次別夫妻の平均初婚年齢【妻】(e-Stat、2026年9月30日公開)。夫は第9.12表-1。e-Stat(CSV) ↩

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