埼玉公立高校の倍率を読み解く──全体像・上位校・今後の動き

令和8年度入試に向けた進路希望調査の倍率を、全体1.07倍の意味、学科別の偏り、上位校ランキング、前年差の読み方、今後の動きまで整理する。

公開日: 2026年1月12日
読了時間: 6
著者: ぽちょ研究所
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埼玉公立高校の倍率を読み解く──全体像・上位校・今後の動き

埼玉県教育委員会が公表した進路希望状況調査(令和8年度入学者選抜・2026年1月8日公表)は、12月15日時点の希望を学校・学科ごとに集計したものです。出願前の「希望倍率」なので、実際の志願倍率や受検倍率とは意味が異なります。

💡 希望倍率は「いまの人気の地図」です。合否の確率そのものではありません。

この記事では、県全体の1.07倍が示す意味、学科別の偏り、上位校ランキング、前年差の読み方、今後の動きを整理します。

  • 希望倍率の定義と読み方
  • 県全体1.07倍の中身
  • 普通科・専門学科・総合学科の差
  • 高倍率校の特徴と注意点
  • 今後のタイムラインで倍率が動く局面
  • この記事で分かること


1. 今回の倍率が示す範囲と時点

今回の数字は、令和7年12月15日時点の希望を募集枠で割った「希望倍率」です。対象は令和8年3月に中学校等を卒業予定の生徒で、県内の中学校439校、義務教育学校4校、特別支援学校中学部41校から希望を集計しています。

  • 出願前の段階のため、志願倍率・受検倍率とは異なる
  • 数値は学校ごとに変動する前提で見る
  • 人気の強弱を把握する「方向性の指標」として使う
  • ポイントは3つあります。


2. 県全体の需給から見た1.07倍の意味

公立高校全日制の進学希望者は37,104人です。内部進学希望者237人を除いた36,867人を、転編入枠と内部進学予定者を除いた募集人員34,600人で割った結果が1.07倍です。前年同期より0.05ポイント低下しました。

この1.07倍は「全体で2,267人分の希望超過がある」計算になります。ただし、実態は全体不足ではなく分布の不一致です。

  • 1.00を超える学科等:95件
  • 1.00未満:139件
  • ちょうど1.00:7件
  • 希望超過は5,743人、余剰は3,476人で、その差が2,267人です。つまり「人気が集中する学科等」と「埋まりにくい学科等」が同時に存在しています。


3. 学科別の構造:普通科が厚く、専門・総合が薄い

学科別に見ると、構造ははっきりしています。

  • 普通科:募集25,514人/希望28,980人 → 1.14倍(前年1.21倍)
  • 専門学科:募集7,382人/希望6,402人 → 0.87倍(前年0.90倍)
  • 総合学科:募集1,704人/希望1,485人 → 0.87倍(前年0.86倍)
  • 普通科への集中が続き、専門・総合は全体として控えめです。ただし専門学科の中でも、芸術系・理数系・食物調理などは高倍率になっており、二極化が見えます。


4. 倍率分布:高倍率より「低倍率の厚み」に注目

倍率の分布を粗く見ると、次のようになります。

  • 0.5未満:25件
  • 0.5以上0.8未満:62件
  • 0.8以上1.0未満:52件
  • 1.0以上1.2未満:50件
  • 1.2以上1.5未満:35件
  • 1.5以上2.0未満:14件
  • 2.0以上:3件
  • 高倍率校に目が行きがちですが、0.8未満が87件あるのは重要な事実です。県全体の実態を見るには、低倍率の厚みも同時に把握する必要があります。


5. 倍率上位ランキング Top30

以下は公立全日制の学校別・学科別の倍率上位30件です。数値は12月15日時点、前年差は前年同時点との差です。

順位 学校名 学科等 募集人員 希望者数 倍率 前年同期 前年差 備考
1○さいたま市立浦和普通2405632.352.36-0.01附属中内部進学あり
2○川口市立普通2405212.172.43-0.26附属中内部進学あり
3○川越市立川越普通1402862.042.24-0.20附属中内部進学あり
4大宮普通3186261.971.76+0.21
5上尾普通2384451.872.05-0.18
6○さいたま市立浦和南普通3205821.821.85-0.03
7芸術総合美術40711.781.55+0.23
8浦和西普通3586111.711.79-0.08
9大宮理数40681.701.65+0.05
10越谷南普通3185241.651.84-0.19
11所沢普通3585571.561.44+0.12
12○さいたま市立大宮北普通2804351.551.73-0.18
13所沢北理数40621.551.88-0.33
14新座総合技術食物調理40621.551.30+0.25
15大宮南普通3184861.531.51+0.02
16熊谷工業情報技術40611.531.45+0.08
17越ケ谷普通3184771.501.54-0.04
18川越工業建築40591.481.38+0.10
19所沢北普通3184661.471.32+0.15
20○川越市立川越国際経済701021.461.54-0.08附属中内部進学あり
21川越総合総合2383431.441.54-0.10
22杉戸普通2783961.421.50-0.08
23いずみ生物系1191661.391.30+0.09
24鳩ケ谷普通1582201.391.60-0.21
25和光国際普通2383321.39開校
26越谷総合技術食物調理40541.351.68-0.33
27川越工業電気40541.351.55-0.20
28川越普通3584831.351.50-0.15
29川越南普通3584811.341.62-0.28
30越谷南外国語40531.331.30+0.03
※ 表中の「○」は市立校を示します。

上位3件はいずれも市立で、さいたま市立浦和(普通)2.35、川口市立(普通)2.17、川越市立川越(普通)2.04です。市立校は通学圏の人口密度や実績評価、附属中の存在が重なり、倍率が強く出やすい傾向があります。

専門学科では、芸術総合(美術)、大宮(理数)、所沢北(理数)、新座総合技術(食物調理)などが高倍率です。全体では専門学科の倍率は低い一方、特定分野への集中がはっきり見えます。


6. 普通科・専門/総合の上位10件

普通科の倍率上位10件

順位 学校名 募集人員 希望者数 倍率 前年同期 前年差
1○さいたま市立浦和2405632.352.36-0.01
2○川口市立2405212.172.43-0.26
3○川越市立川越1402862.042.24-0.20
4大宮3186261.971.76+0.21
5上尾2384451.872.05-0.18
6○さいたま市立浦和南3205821.821.85-0.03
7浦和西3586111.711.79-0.08
8越谷南3185241.651.84-0.19
9所沢3585571.561.44+0.12
10○さいたま市立大宮北2804351.551.73-0.18

専門学科・総合学科の倍率上位10件

順位 学校名 学科等 募集人員 希望者数 倍率 前年同期 前年差
1芸術総合美術40711.781.55+0.23
2大宮理数40681.701.65+0.05
3所沢北理数40621.551.88-0.33
4新座総合技術食物調理40621.551.30+0.25
5熊谷工業情報技術40611.531.45+0.08
6川越工業建築40591.481.38+0.10
7○川越市立川越国際経済701021.461.54-0.08
8川越総合総合2383431.441.54-0.10
9いずみ生物系1191661.391.30+0.09
10越谷総合技術食物調理40541.351.68-0.33

7. 学校選択問題22校と倍率の読み方

令和8年度入学者選抜では、数学と英語の学力検査を学校選択問題で実施する学校が22校あります。学校選択問題は共通問題より難度と選抜力を高め、学力上位層の集積を狙う制度です。

ただし、制度の有無だけで倍率は決まりません。実際、学校選択問題実施校でも、2.35のさいたま市立浦和のように高倍率の学校がある一方で、1.0を下回る学校もあります。通学圏の人口構造、私立との競合、同レベル校の密度が倍率を左右します。

  • 「学校選択問題=高倍率」とは限らない
  • 同レベル帯での相対位置が重要
  • 通学圏の市場構造が倍率を決める
  • 結論としては次の通りです。


8. 前年同時期との対比:前年差の読み方

県全体の倍率は1.12→1.07へ低下しました。普通科の計も1.21→1.14へ低下しており、公立全日制の競争はやや緩んでいるように見えます。

ただし、前年差は需要の変化だけでなく募集人員の増減でも動きます。募集人員が40人減れば、需要が同じでも倍率は上がります。前年差を見るときは「分子(希望者数)」と「分母(募集人員)」を切り分けることが重要です。

前年差が上昇した学科等の上位10件

順位 学校名 学科等 倍率 前年同期 前年差 備考
1芸術総合美術1.781.55+0.23
2大宮普通1.971.76+0.21
3和光国際外国語1.140.99+0.15開校
4所沢北普通1.471.32+0.15
5坂戸西普通0.640.49+0.15募集人員40人減
6大宮光陵普通1.161.03+0.13
7所沢普通1.561.44+0.12
8ふじみ野普通1.090.79+0.30募集人員40人減
9いずみ生物系1.391.30+0.09
10川口工業情報通信1.111.03+0.08

前年差が低下した学科等の上位10件

順位 学校名 学科等 倍率 前年同期 前年差 備考
1○さいたま市立大宮北理数1.282.05-0.77
2鳩ケ谷園芸デザイン1.201.95-0.75
3小川普通0.871.60-0.73
4越谷総合技術食物調理1.351.68-0.33
5所沢北理数1.551.88-0.33
6所沢西普通0.971.29-0.32
7○川口市立普通2.172.43-0.26附属中内部進学あり
8小川国際教養0.921.16-0.24
9越谷西普通1.031.25-0.22
10鳩ケ谷普通1.391.60-0.21

9. 20年の推移で見る変化

中学校等卒業予定者数は、2006年の66,070人から2025年の62,210人へと減少しています。一方で高等学校等への進学希望割合は97%台から98%台へ上昇し、高校進学はさらに一般化しました。

注目すべきは通信制です。通信制高校への進学希望割合は2006年の約0.8%から2025年の約6.6%へ上昇し、希望者数は約7.4倍になりました。全日制の希望者は減少しており、進路の多様化が倍率の背景にあります


10. これからのタイムラインと倍率が動く局面

令和8年度入試の主な日程は次の通りです。

  • 出願入力:1月27日〜2月10日
  • 書類提出:2月13日・16日・17日
  • 志願先変更:2月18日・19日
  • 学力検査:2月26日
  • 実技・面接:2月27日
  • 追検査:3月3日
  • 入学許可候補者発表:3月6日
  • 倍率が大きく動く局面は出願後の志願倍率公表志願先変更です。希望倍率はあくまで前段階ですが、人気校は最終段階でも倍率が高い傾向が残ります。


11. 倍率を読み間違えないための実務メモ

(1) 分子と分母を同時に見る 倍率2.0でも募集人員40の学科等と、募集人員320の普通科では競争の姿が違います。

(2) 前年比は募集人員の変化を先に確認 募集人員が減れば、需要が同じでも倍率は上がります。

(3) 倍率だけで志望を決めない 倍率は「混雑度」であり、合否は学力分布や選抜方式で変わります。


まとめ

埼玉の公立高校倍率は全体1.07倍と聞くと穏やかに見えますが、実態は需要が集中する学科等と、埋まりにくい学科等が同時に存在する「分布の不一致」です。普通科への集中が続く一方で、専門・総合は二極化が進んでいます。

🎯 希望倍率は「地図」。次に動くのは出願と志願先変更です。数字の意味を分解して読むことが、進路判断の精度を上げます。

出典:埼玉県教育委員会「令和8年度入学者選抜 進路希望状況調査(2026年1月8日公表)」

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