メインコンテンツへ移動 / Skip to main content

埼玉県私立高校の「確約」はなぜ成立するのか──北辰テストの基準、個別相談の実際、令和9年度の日程【2026年版】

埼玉県の私立高校で広く運用される「確約制度」を、仕組み・流れ・対象校・令和9年度(2027年4月入学)入試スケジュール・誕生の背景・東京/神奈川/千葉との違いまで網羅的に解説。北辰テストと内申の基準、単願/併願の注意点もまとめました。

個別相談会の窓口で模試の成績表を提示する受験生と、内定を示すチェックマークを表した編集イラスト
一般
公開日: 2025年9月13日
更新日: 2026年10月23日
読了時間: 11 分
著者: ぽちょ研究所
読了時間: 11 分

はじめに

2026年10月23日更新: 公立入試の出願・志願先変更の正確な期間と時刻、私立高校の入試日(1月22日から)、令和9年度の公立募集人員の減少、北辰テストの残り日程を県・運営元の最新の公式情報に更新しました。あわせて、令和9年度は高校からの募集がない浦和明の星女子を確約校の一覧から外し、2025年秋の業者テストをめぐる動きを追記しました。

埼玉県の高校受験には、他県にはあまり見られない独特の仕組み「確約制度(通称:核薬)」が存在します。本記事では、この制度の概要から実際の運用、対象校、誕生の背景、そして直近の令和9年度(2027年4月入学)入試スケジュール、東京都・神奈川県・千葉県との比較までを整理し、これから受験を迎えるご家庭に分かりやすく解説します。

1. 確約制度とは何か

1-1. 定義と仕組み

「確約」とは、埼玉県内の多くの私立高校で行われている事前合格保証制度のようなものです。中学3年生が受ける模試(主に北辰テスト)の成績や通知表を持参し、各校の個別相談会で基準を満たせば「受験すれば必ず合格です」という"内定"を得られます。実際の入試では白紙答案や欠席などをしない限り、不合格になることはありません。

💡 注意:これは公的に明文化された制度名ではありません。学校側は「確約」という語を避け、「安心できる判定です」などと婉曲に伝えるのが一般的です。いわば暗黙の了解として広く運用されています。

1-2. なぜ確約は生まれたのか

公立高校人気の高さ:埼玉県は伝統的に「公立志向」が強い地域です。浦和・浦和一女・大宮といった県立トップ校を第一志望にする受験生が多く、私立は「併願校=すべり止め」として扱われがちでした。

私立の生徒確保:公立に合格したら辞退されてしまう可能性が高い中で、私立が経営を安定させるためには、事前に「合格を保証するから受けてほしい」と迎合する必要がありました。確約は、生徒確保のための競争戦略として誕生したのです。

北辰テストの存在:埼玉県内ではほぼ全員が受験する「北辰テスト」があります[1]。これは県内統一模試として信頼度が高く、私立が客観的基準として用いるには最適でした。こうして「模試偏差値を根拠に合格保証する」という仕組みが可能になったのです。

1-3. いつから始まったのか

正確な制度開始年は公式には残っていませんが、教育関係者や塾の記録によると、1990年代後半〜2000年代前半に広く定着したとされます。バブル崩壊後の少子化と私立の経営難、大学進学実績を伸ばすため優秀層を早めに囲い込みたい進学校の思惑、北辰テストの普及といった条件が重なり、現在のように「秋の個別相談で確約を得る」文化が出来上がりました。

公立志向の強さ、私立の生徒確保の必要性、北辰テストの存在という3つの要因が確約制度を生んだことを示す図

図1:公立志向・私立の経営事情・北辰テストという3つの条件が重なり、1990年代後半から確約文化が定着した。

2. 確約を得るまでの流れ

2-1. 基本ステップ

  1. 北辰テストを受験:多くの学校は7月以降の北辰複数回分で、各校が定める偏差値基準を満たす必要があります。
  2. 学校説明会で基準を確認:夏以降の説明会で内申・偏差値の目安を公開。英検や皆勤などで加点される場合もあります。
  3. 個別相談会に参加:多くの学校で10月上旬から始まり、一部校は9月中に始まります。ここで北辰の成績表や通知表を提示し、基準を満たせば「合格確実」の言葉を得られます。
  4. 正式に出願・受験:確約をもらっても出願と試験は必要ですが、合格は事実上保証されています。

2-2. 単願確約と併願確約

確約には単願確約と併願確約があり、単願の場合は基準がやや低く設定される(または加点優遇がある)ことが多いです。これは学校側が「必ず入学してくれる」単願受験者をより歓迎するためです。

  • 淑徳与野高校:多くが7月以降を基準とする中、6月の北辰テストから提出可能という特例があります。ただし2回分の提出は必須です。
✅ コツ:学校ごとに基準月や加点条件が異なります。必ず最新の学校案内や説明会資料、塾の情報で確認しましょう。
北辰テスト受験、学校説明会での基準確認、個別相談会、出願・受験という確約取得までの4ステップを示すフロー図

図2:確約は「模試→説明会→個別相談→出願」という4ステップで取得する。

3. 確約制度の対象校・非対象校

3-1. 導入している主な高校

埼玉県内ではほぼ全ての私立高校が確約制度を採用しています。偏差値60以上の上位校でも例外ではなく、以下のような進学校も基準を満たせば確約が得られます。

  • 栄東高校(偏差値70前後が基準)
  • 開智高校
  • 大宮開成高校
  • 淑徳与野高校(6月北辰から対象など、学校によって基準月に違いあり)
  • 春日部共栄高校
  • 西武学園文理高校
  • 星野高校
  • 細田学園高校
  • 獨協埼玉高校
  • 城北埼玉高校 など

各校はコース別に細かい条件を設定し、上位コースほど高い基準が求められます。

📝 以前の版では浦和明の星女子高校もこの一覧に含めていましたが、県がまとめた令和9年度の私立高校入試要項では同校は「高校からの募集なし」とされているため、一覧から外しました[4]。各校の募集の有無や入試日は、この入試要項で一覧できます。

3-2. 確約制度が存在しない学校

一方、大学附属の最上位校には確約制度が存在しません。

  • 慶應義塾志木高校
  • 早稲田大学本庄高等学院
  • 立教新座高校

複数の塾や受験情報サイトで繰り返し指摘されている「確約が存在しない埼玉県内の上位校」としては、この3校が代表的です。ただし制度が非公式である性質上、他にも確約を実施していない学校が存在する可能性は否定できません。

これらは入試一発勝負で、北辰偏差値70を超えても「確約」を得ることはできません。系列大学への進学がほぼ保証されているため圧倒的に人気が高く、生徒を「確約」で囲う必要がないからです。つまり市場原理上「売り手市場」の学校といえます。

4. 令和9年度(2027年4月入学)入試スケジュール

直近の受験学年を対象に、令和9年度(2027年4月入学)向けの北辰テストと入試日程を整理します。日程は変更される場合があるため、北辰テストは運営元の公式案内[1]を、公立入試は県教育委員会の発表[2]と実施要項(確定版)[3]を必ず確認してください。

2026年10月23日時点で、北辰テストは第5回(10月11日)まで終わっており、残りは11月8日・12月6日・2027年1月31日の3回です。

時期内容
4月26日北辰テスト第1回
6月21日北辰テスト第2回
7月19日北辰テスト第3回(確約対象①)
9月〜個別相談会が一部校でスタート/北辰テスト第4回(9月6日、確約対象②)
9月11日県が令和9年度の私立高校入試要項を公表(全日制47校・募集人員17,129人)[4]
10月上旬〜個別相談会が本格化
10月11日北辰テスト第5回(確約対象③)
11月8日北辰テスト第6回(確約対象④)。一部会場が使えない旨の案内が出ているので受験会場を要確認
11〜12月頃公立高校の電子出願システムの運用テスト(県が実施予定。詳細は中学校を通じて案内)[5]
12月6日北辰テスト第7回(確約対象⑤・最終)。学校選択問題タイプの体験・対策もできる回
1月22日〜私立高校の入試が始まる(1月22日・23日に第1回を置く学校が多い)[4]
1月26日正午〜2月9日正午公立高校 出願期間(電子出願)
1月31日北辰テスト第8回(埼玉県入試対策の特別回)
2月17日9時〜18日16時志願先変更期間(1回限り)
2月19日16時以降受検票の印刷(電子出願システムから)
2月25日公立高校 学力検査(マークシート約9割・記述式約1割)[6]
2月26日公立高校 面接(全ての学校)
3月1日特色検査(一部の学校。2月26日に実施する場合もある)
3月2日追検査
3月5日9時公立高校 入学許可候補者発表(ウェブの合否照会システム)

令和9年度の公立高校(全日制)の募集人員は33,480人で、前年度より1,600人(40校)減ります。同じ資料では、県内の中学校等卒業予定者数も60,438人と前年度より1,704人減る見込みです[7]。

特に9〜10月は相談会の予約が殺到し、早期の準備が必須です。私立高校の確約に必要な偏差値は多くの学校で7月・9月・10月・11月・12月の北辰テストの結果を評価対象とし、「複数回の平均が基準を満たすこと」を条件とする学校が多く見られます。早めに基準をクリアしておくことで、後半は公立対策に集中しやすくなります。

令和9年度入学者選抜における北辰テスト全8回の日程と、個別相談会・公立高校出願・学力検査・合格発表の時期を並べたタイムライン図

図3:令和9年度(2027年4月入学)向けの北辰テスト8回と、個別相談会・出願・入試のタイムライン。

5. なぜ公にされないのか/他県との比較

5-1. なぜパブリックにされないのか

  • 建前は公平な入試:文部科学省や教育委員会は「試験で合否を判定する」と定めているため、公に確約を制度化できません。
  • 形式上の入試維持:試験を形だけでも行う必要があるため、学校側は婉曲的に伝え、書面で「確約」とは言いません。
  • 慣習化した"公然の秘密":保護者・塾・学校の三者間で毎年当然のようにやり取りされ、文化的に定着しました。

このため、確約は「制度ではないが、実態として制度化している」特異な存在になっています。

5-2. 他県との比較

  • 東京都:推薦入試が主流。内申点を基準に「単願推薦」「併願推薦」があり、合格率は高い。
  • 神奈川県:併願優遇があり、内申点を満たせば合格がほぼ保証される。
  • 千葉県:推薦・併願推薦あり。内申基準を満たすと合格率は高いが、埼玉のような"模試ベースの確約"はなし。
🎯 埼玉の特徴:北辰テストという外部模試を基準に、高校と受験生が直接合格を約束する点。
埼玉・東京・神奈川・千葉における私立高校の合格保証の仕組みの違いを比較する編集イラスト

図4:東京は内申ベースの推薦、神奈川は併願優遇、千葉は推薦中心。埼玉だけが外部模試ベースの確約という独自路線。

6. デメリットと活用のコツ

確約制度について調べた範囲では、明確なデメリットはほとんど指摘されていません。むしろ「合格が保証される安心感」が最大の利点です。強いて言えば、確約を得たことで安心して学習意欲が下がってしまうケースが一部ある程度ですが、制度そのものに不利益はありません。したがって、取れるなら確約は積極的に取っておいた方が良いと言えます。

一方で、制度の外側からの見直し圧力は強まっています。2025年9月30日の文部科学大臣会見では、埼玉県内の私立高校が業者テストの成績を持参させ合格や奨学金を確約している例があるとの質問に対し、大臣が、業者テストの結果を資料として用いた入学者選抜は行われるべきでないという1993年通知の考え方を改めて示しました[8]。2026年10月23日時点で、県や私立校側が確約の慣行を一律に廃止したという公式発表は確認できていませんが、北辰の成績の扱いや相談の進め方は学校ごとに変わる可能性があります。この論点は埼玉高校入試の「複数校併願」噂を解体した記事でも整理しています。

⚠️ 注意:各校の運用は毎年見直されます。最新の募集要項・学校説明会・塾情報で必ず確認してください。

まとめ

埼玉県の確約制度は、公立志向の強さ・私立の経営上の必要性・北辰テストという基準の存在によって生まれ、1990年代後半から急速に広まった仕組みです。偏差値60以上の進学校でも広く導入され、公立第一志望の受験生にとって「すべり止め」として不可欠な存在となっています。

ただし、慶應志木・早大本庄・立教新座など大学附属トップ校は確約を導入しておらず、ここでは実力勝負が求められます。また、淑徳与野のように6月北辰も対象となる学校があること、単願と併願で基準が異なり単願の方が優遇されやすいことなど、学校ごとに細かな違いがあります。これは必ず事前に塾や学校説明会で最新情報を確認する必要があります。

確約は公式には語られない"暗黙の了解"ですが、地域の受験文化を支える大黒柱とも言えます。受験生にとっては安心材料となる一方、過度な依存による学習意欲低下にも注意が必要です。制度の背景を理解したうえで、賢く戦略的に活用することが志望校合格への近道となるでしょう。

参考文献・出典

  1. [1]北辰図書株式会社(北辰テスト運営)— 公式サイト。回数・実施日・出題範囲は毎年更新されるため、必ず公式の最新案内で確認すること。12月・1月の中3テストの案内(2026年10月20日)と11月8日実施回の会場に関するお知らせ(2026年10月8日)も同サイトに掲載。 ↩
  2. [2]埼玉県 — 公式サイト。公立高校入学者選抜の日程は県教育委員会の発表が一次情報。 ↩
  3. [3]埼玉県教育委員会「令和9年度入学者選抜実施要項・入学者選抜要領(確定版)」(2026年5月29日掲載)。https://www.pref.saitama.lg.jp/f2208/r9nyuushi-jisshiyoukou.html ↩
  4. [4]埼玉県「令和9年度埼玉県私立中学校・高等学校・中等教育学校入試要項について」(2026年9月11日)。https://www.pref.saitama.lg.jp/a0204/news/page/news2026091101.html / 私立高等学校入試要項(PDF)https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/26360/r9_koukounyuushiyoukou.pdf ↩
  5. [5]埼玉県教育委員会「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜 電子出願手続リーフレット」。https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/257619/r9denshishutsugantetsuzuki.pdf ↩
  6. [6]埼玉県「令和9年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における学力検査問題の出題の基本方針並びに学力検査の実施教科及び出題範囲について」(2026年5月21日)。https://www.pref.saitama.lg.jp/f2208/news/page/news2026052101.html ↩
  7. [7]埼玉県教育委員会「令和9年度生徒募集人員一覧」(2026年6月16日掲載)。https://www.pref.saitama.lg.jp/f2207/nyugakusya-senbatsu/boshujininichiran.html ↩
  8. [8]文部科学省「あべ俊子文部科学大臣記者会見録(令和7年9月30日)」。https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00623.html ↩

関連記事

2026年2月12日

埼玉県公立高入試(2/10時点)倍率分析:全体低下と二極化をどう読むか

埼玉県教育委員会の2/10時点データを基に、全体倍率・学科別傾向・トップ校・定員割れ・前年差を整理。最終確定前に見るべきポイントを解説します。

一般続きを読む
2026年1月12日

埼玉公立高校の倍率を読み解く──全体像・上位校・今後の動き

令和8年度入試に向けた進路希望調査の倍率を、全体1.07倍の意味、学科別の偏り、上位校ランキング、前年差の読み方、今後の動きまで整理する。

一般続きを読む
2026年10月20日

都道府県別の平均年収ランキング【2026年版】東京は推計678万円、最下位の青森とは1.69倍の差

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の最新結果(2025年調査、2026年3月公表)から、47都道府県の推計年収(月給×12+年間賞与)を同じ式で計算した。1位は東京都の678.0万円、2位は神奈川県、3位は愛知県。最下位は青森県の400.8万円。男女差、前年比、物価の地域差もあわせて見る。

一般続きを読む
2026年10月20日

国民健康保険料が安い大都市ランキング【2026年度】同じ所得でも大阪市は福岡市より年13万〜23万円高い

住民税は全国ほぼ一律。街で大きく違うのは国民健康保険料だ。政令指定都市20市と東京23区の2026年度の料率を公式資料から集め、同じ世帯で計算した。最安は福岡市、最高は大阪市・堺市で、夫婦の差は年23万円。23区でも中野区と江戸川区は高い。

一般続きを読む
2026年10月20日

世界で一番高いトレカは? 落札額ランキング【2026年版】ポケカ1枚約25億円、大谷翔平は約16.5億円

2026年2月、ポケモンカード「ピカチュウイラストレーター」が1,649万ドル(約25億円)で落札され、トレカの世界最高額になった。スポーツカードとカードゲームの高額取引を一覧にし、何が値段を決めるのか、記録の読み方と買う側の注意点までまとめた。

一般続きを読む

ぽちょ研究所の実験

読んだあとに、ちょっと試してみる