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ベンチマーク王は、なぜ現場でコードを壊すのかGoogle Antigravityが流行らない本当の理由

Google Antigravityはなぜ現場でデグレードを起こすのか。月額2,900円の圧倒的コスパと、天下のGoogleがAIエージェント開発で出遅れた謎を、モデルの知能と製品品質の違いから徹底解剖する。

テクノロジー
公開日: 2026年8月5日
読了時間: 16
著者: ぽちょ研究所
読了時間: 16

1. 結論:ベンチマーク王は、なぜ現場でコードを壊すのか

「また壊した」

ぽちょ研究所ではこれまで、Google Antigravityに機能追加や修正を任せた結果、既存機能にデグレードを発生させ、ChatGPT CodexやClaude Codeに修復してもらったことが、少なくとも3回ある。

Antigravityに作らせて、Codexに直させる。

まるでGoogleが新人を現場へ送り込み、OpenAIやAnthropicが後ろからコードレビューしているような状況である。

それでも、ときどき使ってしまう。

「今度こそ、かなり進化したのではないか」

そんな怖いもの見たさがあるからだ。

これは単なる相性の問題なのだろうか。それとも、天下のGoogleは本当にAIエージェントによるコーディングで出遅れているのだろうか。

結論から言えば、GoogleはAIモデルの知能で大きく遅れているわけではない。遅れているのは、賢いモデルを“安心して仕事を任せられる開発者向け製品”へ仕立てる能力である。

AIコーディングで最後に問われるのは、ベンチマークの最高点ではない。

昨日まで動いていたシステムを、今日も壊さないことだ。

2. Google Antigravityとは何なのか

Google Antigravityは、Googleが2025年11月に発表したエージェント型開発プラットフォームである。

最初のAntigravityは、コードエディタ、ターミナル、ブラウザをAIエージェントが横断し、自分で計画し、コードを書き、アプリケーションを起動し、ブラウザ上で動作確認まで行うという構想だった。

通常のIDE画面に加え、複数エージェントへ仕事を割り振る「Manager Surface」が用意され、作業計画、スクリーンショット、ブラウザ操作の録画などを成果物として確認できる。Googleが掲げたのは、単なるコード補完ではなく、「人間がAIエージェントを管理する開発環境」である。

2026年5月に発表されたAntigravity 2.0では、さらに複数のエージェントを並列稼働させる「エージェントの司令塔」へと重心が移った。CLIやSDKも追加され、従来のGemini CLIやGemini Code Assistの個人向けエージェント機能も、Antigravity CLIへ集約されている。

思想だけを読めば、かなり先進的である。

ところが、ここで一つ問題がある。

Googleには、AntigravityのほかにもAI Studio、Jules、Android StudioのAIエージェント、Gemini API、Gemini Enterprise Agent Platformがある。Google AI Proの公式ページにも、これらが別々の製品として並べられている。

つまりGoogleは、AIコーディングの技術を持っていないのではない。

技術と製品が多すぎて、開発者が「結局、毎日どれを使えばよいのか」を理解しにくいのである。

3. Gemini 3.1 Pro Highは、本当に弱いのか

Gemini 3.1 Proそのものは弱くない。

Googleのモデルカードによると、実際のGitHub課題を解決させるSWE-Bench Verifiedで80.6%、より難しいSWE-Bench Pro Publicで54.2%を記録している。コーディングモデルとして十分に一線級の数字である。

Antigravityで表示される「Gemini 3.1 Pro High」は、まったく別のモデルではなく、Gemini 3.1 Proへ高い推論量を割り当てる設定である。Lowより時間と計算資源を使う代わりに、複雑な問題を深く考えさせる。

では、なぜベンチマークでは強いモデルが、実際のリポジトリではデグレードを起こすのか。

答えは、モデルの知能と、エージェント製品の品質は別物だからである。

AIコーディング製品の実力は、おおむね次の掛け算で決まる。

モデルの推論能力
× リポジトリの理解
× 指示の保持
× 編集範囲の制御
× テストの実行
× 失敗の検知
× 修正・ロールバック能力

モデルがどれほど賢くても、変更してはいけないファイルを触り、既存の設計規約を無視し、テストに失敗しているのに「完了しました」と報告すれば、製品としては使えない。

興味深い研究もある。

実務に近いiOSアプリの修正をAIエージェントへ行わせた「SWE-Bench Mobile」では、22種類のエージェントとモデルの組み合わせを検証したが、最良の構成でも成功率は12%だった。さらに、同じモデルを使用しても、載せるエージェント基盤によって成績が最大6倍違った。

同じ頭脳でも、身体と仕事の進め方が違えば、能力が6倍変わる。

これはAIコーディングを考えるうえで、かなり重要な事実である。

4. SWE-Benchで高得点なら安心、ではない

SWE-Benchは有用な指標だが、万能ではない。

特定のGitHub Issueとリポジトリを渡し、テストに通る修正を作れるかを見る試験である。一方、実務では次のような事情が加わる。

  • 文書化されていない社内ルール
  • 過去の経緯による不自然な実装
  • 複数サービスにまたがる影響
  • データ移行や後方互換性
  • 設定ファイルやCI/CDへの副作用
  • テスト自体の不足
  • 顧客ごとの特殊な利用方法

より長時間で複数ファイルにまたがる課題を扱うSWE-Bench Proは、1,865件、41の稼働中リポジトリから構成されている。通常のVerifiedよりはるかに難しく、モデル間の差もより現実に近くなる。

GoogleのGemini 3.1 Proも、Verifiedでは80.6%だが、Pro Publicでは54.2%まで下がる。

つまり、簡潔に切り出された修正問題には強いが、現実の複雑な変更では成功率が大きく落ちる。これはGeminiだけではなく、現在のすべてのAIエージェントに共通する限界である。

AIコーディングのベンチマークは、大学入試のようなものだ。

試験で高得点を取る人が、必ずしも既存システムの保守運用に強いとは限らない。

本番環境では、数学の難問を解く能力よりも、「頼まれていない場所を勝手に変えない能力」のほうが重要になる。

5. Google Antigravityが流行らない六つの理由

複数の分散した戦略と選択肢を抽象的に描いたビジュアル

巨大なAI基盤を目指すGoogleと、特定の体験に集中するCursorやClaude Codeの違いが、製品の使い勝手に直結している。

5.1. 開発者が求めているのは最高点ではなく、成績の安定性

AIエージェントに10回仕事を任せ、9回成功しても、残り1回で認証機能や決済機能を壊されたら、そのツールを本番開発の中心には置けない。

コーディングエージェントの価値は、次の式で考えたほうがよい。

生産性向上 − レビュー時間 − 障害調査 − 復旧作業 − 再発への不安

コードを30分早く作れても、デグレードの調査に2時間かかれば赤字である。

Claude CodeやCodexが支持される理由は、常に正解するからではない。比較的、変更理由を追いやすく、失敗時の修正を頼みやすく、既存コードを読み直して立て直す能力が高いからである。

ぽちょ研究所でAntigravityによるデグレードをCodexやClaude Codeが修復できたという経験は、この差を端的に表している。

実務では「最初に正しく書く能力」と同じくらい、「他人や他AIが壊したコードを診断して戻す能力」が重要なのである。

5.2. Googleの製品戦略が分散している

Claude Codeは「ターミナルでClaudeに開発させるもの」と説明できる。

Cursorは「AIを中心に作られたコードエディタ」。

Codexは「ローカル、クラウド、アプリで複数の開発作業を任せるOpenAIのコーディングエージェント」。

Devinは「クラウド上で自律的に働くAIソフトウェアエンジニア」。

それぞれ一文で説明できる。

一方、GoogleではAntigravity、Jules、AI Studio、Android Studio、Gemini CLIからAntigravity CLIへの移行、Gemini Enterprise Agent Platformなどが並走している。

Antigravity自体も、IDE型の製品として登場した後、複数エージェントを統括する独立型の司令塔、CLI、SDKへと短期間で範囲を広げている。技術的には前進だが、利用者から見ると「製品の完成を待つ前に次の構想が始まる」ように映る。

Googleは滑走路を何本も建設している。

しかし開発者が知りたいのは、空港全体の壮大な将来構想ではない。

明日の朝、どの便に乗れば目的地へ着くのかである。

5.3. レート制限が不透明で、作業計画を立てにくい

Google AI ProのAntigravity枠は、公式には「5時間ごとに更新される高いクォータ」と説明されている。ただし週次上限も存在し、消費量はプロンプト数ではなく、エージェントが行った作業量、処理の複雑さ、Google側の供給能力によって変動する。

具体的に「何回使える」「何トークンまで」とは示されておらず、上限は変更される可能性がある。

これは利用者にとって厄介である。

「あと何時間働かせられるか」が分からなければ、重要な実装の途中で止まるかもしれない。簡単な作業では長く使えても、大規模なリポジトリを読み、何度もテストし、ブラウザを操作する仕事では急速に枠を消費する。

Googleのコミュニティには、ProやUltraでClaude Opus系モデルを使ったところ、十数分から数十分、あるいは少数の重いタスクで上限へ達したという報告が複数ある。ただし、これらはユーザー報告であり、条件を統一した公式検証ではない。

ぽちょ研究所でも、月額約20ドル相当のプランでClaude Opus 4.6を選択できる時期があったものの、30分程度の作業で一定期間のレート制限へ達することがあった。

使えることと、仕事で使い続けられることは違う。

Antigravityはメニューに高級車を並べているが、ガソリンは少量しか入っていないのである。

5.4. 月額20ドルでOpusを無制限提供するのは、そもそも難しい

Claude Opus 4.6のAPI価格は、100万入力トークン当たり5ドル、100万出力トークン当たり25ドルだった。20万トークンを超える大規模コンテキストでは、さらに高い価格が適用される。

AIコーディングエージェントは、利用者が入力した短い依頼文だけを処理しているわけではない。

毎回、コード、ディレクトリ構造、Gitの差分、テスト結果、ターミナル出力、過去の会話などを読み直す。失敗すれば、さらに再試行する。

したがって、月額20ドルの定額料金で、高価なOpusを長時間自由に走らせれば、Google側が赤字になる可能性が高い。

制限が厳しいこと自体は不思議ではない。

問題は、利用者が事前にその制限を把握しにくいことである。

Antigravityのモデル一覧にはGemini 3.1 Pro、Claude Sonnet/Opus 4.6、GPT-OSSなどが掲載されている一方、現行のプラン説明では「第三者モデルへのアクセス」がUltraの特典として明記されている。提供条件は時期、地域、アカウントによって変化しており、ドキュメントを読んでも利用可能範囲を一読で理解しにくい。

高性能モデルを見せることには成功しているが、料金体系の安心感にはつながっていない。

5.5. Googleは「一つの優れた道具」より「巨大なAI基盤」を作ろうとしている

Googleの狙いは、単にCursorのようなIDEを作ることではない。

Google Cloud上の安全なサンドボックスでエージェントを動かし、SDKから呼び出し、企業向けプラットフォームへ接続し、Android、検索、Workspace、動画生成まで含めた巨大なAIエコシステムを作ろうとしている。

企業戦略としては合理的である。

ただし、巨大なプラットフォームを作ることと、プログラマーが毎朝起動したくなる道具を作ることは別の能力だ。

Cursorはエディタ体験に集中した。

Claude Codeはターミナルに集中した。

Codexは複数エージェントとクラウド実行に集中した。

Googleは最初から、IDE、CLI、SDK、クラウド基盤、企業向けエージェント、ブラウザ操作を一度に取りに行った。

これはGoogleらしい強さであると同時に、Googleらしい弱さでもある。

5.6. AI開発ツールは「周囲が使っていること」自体が性能になる

2026年に公開された大規模なリポジトリ調査では、1億8,000万以上のGitHubリポジトリを分析し、Claude Codeが確認可能な範囲で88万6,122件のコミット、1万7,295のプロジェクトに関与していたと報告された。ただし、設定ファイルなどから利用を推定する調査であり、すべての利用を捕捉できるわけではない。

Claude Codeのnpmパッケージも、調査時点で週間1,000万件を超えるダウンロードを記録していた。ただし、アップデート、CI、複数環境からの取得を含むため、利用者数と同一ではない。

OpenAIは2026年7月、Codexを週500万人以上が利用していると発表した。Cursorは自社発表として、5万社以上の企業とFortune 500の64%が利用しているとしている。

これらは測定方法が異なるため、単純比較はできない。

しかし、少なくともGoogleは、AntigravityについてCodexの週500万人に相当する明確な利用規模を公表していない。

開発ツールにはネットワーク効果がある。

利用者が多いほど、設定例、プロンプト、Rules、Skills、トラブル解決策、ブログ、動画、社内ノウハウが増える。研究でも、AIコーディングツールの導入は、周囲の同僚が使っている姿を見ることで大きく広がることが確認されている。

Claude CodeやCursorには「この問題は、ほかの人もすでに遭遇している」という安心感がある。

Antigravityには、まだ「自分が実験台なのではないか」という感覚が残る。

6. Google AI Proは、本当にコスパが悪いのか

ここまでAntigravityを厳しく評価したが、Google AI Pro全体は話が違う。

2026年8月時点の日本向けGoogle AIプランは、主に次の構成になっている。

プラン月額ストレージ主な特徴
Google AI Plus725円400GBGemini、Flow、Notebookなどの使用量拡大
Google AI Pro2,900円5TBGemini上限4倍、Antigravity拡大、Flow 1,000クレジット、Googleアプリ連携
Google AI Ultra地域・契約階層による20TBまたは30TBPro比5倍/20倍の上限、Antigravity最大枠、最上位機能

Google AI Proのストレージは、以前の2TBから現在は5TBへ増量されている。さらに、最大5人のファミリーメンバーと容量を共有でき、対象メンバーは追加料金なしで一部のAI特典も利用できる。

また、Google AI Proには次のような機能が含まれる。

  • Gemini 3.1 ProとDeep Researchの利用枠拡大
  • Gmail、Googleドキュメント、スプレッドシートなどへのGemini統合
  • Gemini Notebook
  • Google Flowの月間1,000 AIクレジット
  • Antigravity、Jules、AI Studioの利用枠拡大
  • 毎月10ドル分のGoogle Cloudクレジット
  • 対象地域ではYouTube Premium LiteやGoogle Home Premium Standard

一部機能には国、言語、年齢などの制約がある。

Flowの1,000クレジットは、現在の消費量を単純計算すると、Veo 3.1 Liteなら約100回、Fastなら約50回、Qualityなら約10回に相当する。実際には一度に複数案を生成する設定などで消費量が変わる。

動画クリエイター、Google Driveを多用する家庭、Gemini、Notebook、Gmail連携を使う人にとって、月額2,900円はかなり安い。

Google AI Proを「AIコーディングツールの料金」として見ると、中途半端である。

しかし、5TBのクラウドストレージ、動画生成、調査AI、オフィス統合、家族共有、コーディング支援をまとめた総合サービスとして見れば、競合にはない圧倒的な強みがある。

Google AI Proは高級な電動ドライバーではない。

工具、倉庫、カメラ、編集室、図書館までまとめて借りられるホームセンターなのである。

7. Claude Code、Codex、Cursor、Devinとの比較

7.1. Claude Code:既存コードを読ませ、慎重に直させる

Claude Proは月額20ドルで、Claude Codeも利用できる。利用枠は通常のClaudeとClaude Codeで共有され、5時間単位のセッション上限と週次上限がある。上限到達後は追加クレジットによる利用も可能で、より多く使うMaxプランも用意されている。

Claude Codeの長所は、ターミナル中心で余計なUIが少なく、既存コードを読ませ、計画を立てさせ、差分を確認しながら進めやすいことだ。

派手なデモよりも、既存リポジトリの保守、リファクタリング、障害調査に強い。

一方、月額20ドルのProで毎日何時間も使えるわけではない。業務の中心に置く場合はMaxや従量課金を視野に入れる必要がある。

7.2. ChatGPT Codex:複数作業と復旧力に強い

ChatGPT Plusは月額20ドルでCodexを利用できる。Proには100ドルの5倍枠と200ドルの20倍枠があり、上限到達後はクレジットを追加できる。

CodexはCLIだけでなく、デスクトップアプリ、クラウド実行、複数エージェントの並列作業、Skills、Automationsまで統合されている。

長時間の調査、複数ファイルにまたがる変更、テストの反復、別エージェントが作ったコードの診断と修復に強い。

OpenAIの法人向け目安では、開発者一人当たりの平均的なCodex利用費は月額100~200ドル程度とされており、本格利用にはPlus以上の費用がかかることを前提としている。

Antigravityより安いとは限らない。

しかし、「どの程度使えば、どの程度費用が必要になるか」が比較的見えやすい。

7.3. Cursor:最も完成度の高い“AI入りIDE”

CursorはProが月額20ドル、Pro+が60ドル、Ultraが200ドルである。

公式資料では、Proに約20ドル、Pro+に約70ドル、Ultraに約400ドル相当のモデル利用枠が含まれ、上限後はAPI相当の従量課金へ移行できる。日常的にエージェントを使う開発者は、月60~100ドル程度、パワーユーザーは200ドル以上を使う傾向があるとしている。

Cursorの強みは、モデル単体ではない。

  • コードベースのインデックス
  • エディタ内での差分確認
  • 複数モデルの切り替え
  • RulesやSkills
  • 補完とエージェント操作の統合
  • 使用量と追加課金の分かりやすさ

これらを一つのIDE体験としてまとめている。

特定モデルが一時的に不調でも、別モデルへ切り替えられる。AIモデルを選ぶ製品ではなく、仕事を進めるためにモデルを使い分ける製品である。

7.4. Devin:一緒に書くのではなく、仕事を渡す

DevinはProが月額20ドル、Maxが200ドル、チーム向けは最低月額80ドルからとなっている。Proには日次・週次上限と従量課金枠があり、Maxではより大きな週次枠が提供される。

Devinの特徴は、対話しながら一行ずつコードを書くことではない。

仕様が明確な移行、定型的な修正、バックログ処理、リファクタリングなどを、クラウド上の独立した作業者へ任せることにある。

うまく使えば、人間が別の仕事をしている間に進められる。

一方、依頼内容が曖昧な仕事や、細かな設計判断を繰り返す仕事では、指示とレビューの管理コストが増える。

8. 結局、どれを選ぶべきか

利用目的向いているツール
ターミナルで既存コードを慎重に修正Claude Code
長時間タスク、並列作業、障害調査、復旧Codex
IDEで毎日AIと一緒に開発Cursor
定型的なバックログや移行作業を委任Devin
Google Cloud、Gemini、動画、Driveを総合利用Google AI Pro
新しいマルチエージェント開発を実験Antigravity

Antigravityを日常開発の主役に据えるのは、現時点では勧めにくい。

ただし、次の用途には価値がある。

  • 新規プロジェクトのたたき台
  • UIプロトタイプ
  • ブラウザ操作を伴う動作確認
  • Geminiの長いコンテキストを使った調査
  • Google Cloudと組み合わせたエージェント実験
  • 失敗しても戻せる小規模な変更

反対に、認証、決済、データ移行、インフラ設定、広範囲なリファクタリングを任せる場合は、次の安全策が必要である。

  1. 必ず専用ブランチかGit worktreeで作業させる
  2. 変更前にテスト、Lint、型チェックを通して基準値を保存する
  3. 最初に計画だけを提出させ、編集範囲を限定する
  4. 一度に複数機能を変更させない
  5. 小さな単位でコミットさせる
  6. 完了後は別モデルにレビューさせる
  7. データ削除やマイグレーションは人間の承認なしに実行させない

Antigravityに実装させ、Claude CodeまたはCodexに差分レビューをさせる構成は、手間に見えて実は合理的である。

AIエージェント同士を競わせるのではなく、作るAIと、疑うAIを分けるのである。

9. まとめ:天下のGoogleは、本当に負けているのか

Googleは、Transformerを生み、TPUを持ち、世界最大級の検索、クラウド、ブラウザ、スマートフォンOS、動画プラットフォームを持つ。

技術的な材料は、ほぼすべてそろっている。

それでもAIコーディングでは、Claude Code、Codex、Cursorほどの信頼をまだ得られていない。

理由は単純である。

GoogleはAIの可能性を広げることには長けているが、一人の開発者が毎日安心して使える一本の道具へ絞り込むことには苦戦している。

Gemini 3.1 Pro Highは賢い。

Antigravityの構想も面白い。

Google AI Proのコストパフォーマンスも、総合サービスとして見れば極めて高い。

それでも、システム開発を継続的、安定的、高品質に回せるかと問われれば、現時点で答えは「まだ難しい」となる。

AIコーディングの勝者を決めるのは、一度だけ鮮やかなコードを書くモデルではない。

  • 指示を忘れない
  • 触るべきでない場所を触らない
  • テストに失敗したら止まる
  • 自分の変更を説明できる
  • 壊したら自分で原因を探せる
  • 明日も同じ品質で働ける

そんな、少し地味な能力である。

Google Antigravityは、未来を感じさせる。

しかし現場が求めているのは、未来を感じさせるデモではない。

今日壊さず、明日も続きを任せられる同僚なのである。

だから、ぽちょ研究所ではまた数か月後、Antigravityを起動するのだろう。

「さすがに、今度こそ進化したのではないか」と。

そして念のため、その隣ではCodexかClaude Codeを待機させておく。

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