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見えない恐怖症・不安症を理解しよう
日常生活の中で「この人、何か怖がっているのかな」と思うことはあっても、心の中の苦しみまでは見えないものです。実は、高いところや狭い空間、暗闇、注射針など特定の対象に激しい恐怖を感じる「恐怖症(限局性恐怖症)」や、人ごみや人前で極度に緊張する社会不安、潔癖症とも呼ばれる強迫性障害など、隠れた不安障害は決して珍しいものではありません。
例えば、日本では限局性恐怖症の生涯有病率は約3.4%(参考:
大切な前提: 外見だけでは分からない心のしんどさがあります。見えないからこそ、まず理解しようとする姿勢が必要です。
日常での例と「多様性」の視点
学校行事や遠足のとき、クラスメイトが「高いところは無理」と顔をゆがませることがあるかもしれません。例えば、ある学校の遠足で観覧車に乗ろうとした際、怖がる生徒が「自分は高所恐怖症だから無理」と打ち明けた場面を想像してみてください。しかし、周りの友達は「大丈夫だって!」「来いよ!」と誘い、勇気を出して怖いと伝えた彼は何とか乗ることになった——そんなケースもありえます。
外から見れば「高いところくらい平気だろう」と思われがちですが、当人にとっては心底苦しい体験です。自分には理解できなくても、「怖い」という感情は本人の意思とは別に起こるもの。それを無視して無理に行動させると、相手の心を傷つけることになります。
現代では多様性(ダイバーシティ)の大切さが叫ばれますが、これは肌の色や国籍だけでなく、心の状態も多様性の一つです。障害やアレルギー、精神疾患と同じように、人によって感じ方や苦手なことは千差万別。目に見えない恐怖症や不安症もその一端であり、たとえ周囲に理解されなくても「そういう苦手な人もいるんだ」と受け止める心こそが多様性の本質と言えます。学校や社会で誰かが自分の苦手を打ち明けたときには、その勇気に寄り添い、尊重する姿勢が求められます。
データで見る恐怖症・不安症の実態
専門家の調査でも心の症状は珍しくありません。世界保健機関(WHO)や各種レビューでは、不安障害全体の生涯有病率が4~9%とされています(参考:
数字の肌感:小中学校のクラスに1~2人程度、恐怖症や不安症を抱える人がいても不思議ではない割合です。
法律からみた無理強いの危険性
特に子どもの場合、無理に怖いことをさせたり、やりたくないことをやらせたりする行為はいじめや暴力行為になり得ます。刑法では、人に暴行や脅迫を用いて「義務のないこと」を強制した場合、「強要罪」として処罰され、3年以下の懲役が科されます。たとえ殴ったりしなくても、相手が嫌がることを無理にやらせるのは「暴行」とみなされ、2年以下の懲役や罰金の対象となる可能性があります(参考: 文部科学省
法的にも、無理に恐怖を克服させることは許されません。本人の心身を傷つけるリスクだけでなく、周囲の大人にも責任が問われます。
具体的な対処と周囲の支え方
まとめ
私たちの周りには、外見からは分からない様々な恐怖症・不安症を抱えた人がいます。その人たちが助けを求めたら、まず理解しようとすることが大切です。たとえ自分が理解できなくても、「あなたの不安は本当なんだね」と受け入れる態度が、多様性を尊重する第一歩です。
無理に恐怖を克服させようとすると、心身に深いダメージを与えるばかりか、法的な問題にもなりかねません(参考: 文部科学省