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持ち家か賃貸か、その二択をやめる──リモートワーク家庭の「持ち家+近所の賃貸」という第三案【住まい戦略】

3LDKの持ち家を残し、子どもの個室と在宅勤務が重なる数年間だけ徒歩圏にワンルームを借りる。月5万・7万・9万円の10年試算、住み替え費用、地域差、契約上の注意まで、第三の住まい方をデータで検証する。

3LDKの家族の持ち家と近所の仕事部屋を短い道でつないだAI生成イラスト
ライフスタイル
公開日: 2026年8月11日
読了時間: 12
著者: ぽちょ研究所
読了時間: 12

1. 結論:家は「一生分の最大サイズ」を買わなくていい

持ち家か、賃貸か。この議論には、たぶん万人共通の勝者はいない。

転勤が多い、収入の変動が大きい、一つの地域に定住する予定がないなら、賃貸の柔軟性は強い。反対に、生活圏がほぼ決まり、長く住みたい人にとって、持ち家は間取りを変えられる安心や、老後も住む場所があるという心理的な土台になりうる。

問題は、この二択で「30年後まで必要になる最大の部屋数」を今日決めようとすることだ。

たとえば夫婦と子ども2人が3LDKに住む。子どもが成長して1人1部屋を使えば、残りは夫婦の寝室とLDKで埋まる。そこへフルリモートの仕事が入ると、働く場所が消える。だから4LDKへ買い替える。しかし子どもが独立すれば、その追加の1室はまた用途を失うかもしれない。

そこで第三案がある。3LDKの持ち家はそのまま残し、部屋需要が膨らむ期間だけ、自宅から徒歩2〜5分の小さな賃貸を借りる。 仕事部屋、勉強部屋、家族が少し距離を置く場所として使い、不要になれば解約する。「持ち家+賃貸」という、都市版の離れである。

これは全員の最適解ではない。だが、部屋不足が5〜10年程度の一時的な問題なら、数千万円単位の資産を組み替える前に、必ず比較すべき選択肢だ。

2. 「買うか借りるか」が終わらないのは、比較している価値が違うから

この論争は新しくない。住宅情報サイトには今も「賃貸VS買う」「持ち家vs賃貸」の特集が並び、2024年にはKADOKAWAから、そのものずばり『賃貸か持ち家か?』という家族の実録コミックエッセイも刊行された。2025〜2026年にも住宅コスト本や住宅選択の解説が続いている。[1][2][3]

では、書店にこのテーマの本は「何冊」あるのか。調べた結論は、責任を持って示せる固定値はない、である。国立国会図書館サーチや書店検索では、紙・電子版、改訂版、雑誌、題名に「持ち家」「賃貸」を含まない住宅本、テーマに一章だけ触れる本が混ざる。検索日と数え方で件数が変わるため、見かけのヒット数を「本の数」と断言する方が不正確だ。確認できるのは、単発の流行ではなく、出版社・住宅メディア・研究機関が繰り返し扱う定番テーマだということまでである。[4]

議論が終わらない理由は、片方が計算を間違えているからではない。比較している価値が違う。

観点持ち家が強い場面賃貸が強い場面
安定住み続ける場所を確保しやすい所有しないため資産価格リスクを負いにくい
柔軟性改装や使い方を自分で決めやすい場所・広さ・家賃を変えやすい
お金返済後も住宅が残る可能性がある大きな頭金や売買を避けられる
リスク金利、修繕、税、災害、売却価格家賃上昇、更新、入居審査、老後の契約

2023年の持ち家住宅率は全国60.9%だが、東京44.7%、大阪54.5%、埼玉65.1%、千葉64.7%、神奈川58.7%と差が大きい。都市ごとの住宅価格、賃貸在庫、通勤、土地への定着度が違う以上、全国一律の正解になるはずがない。[5]

そして「持ち家+賃貸」は、両方の欠点を二重に背負う案にも、両方の長所を組み合わせる案にもなる。分かれ目は、借りる目的と終了条件を決められるかどうかだ。

3. 3LDKが狭いのではない。必要な部屋数が一時的に山になる

2024年国民生活基礎調査では、児童のいる世帯は907万4,000世帯、平均児童数は1.68人。所得は平均820.5万円、中央値712万円だった。世帯年収400万〜1,000万円、子ども1〜2人という想定は、現実の子育て世帯から大きく外れたモデルではない。[6]

ただし、赤ちゃんに独立した仕事机付きの個室は通常いらない。子どもが自室を強く必要とする時期も家庭ごとに違う。小学校入学から高校卒業なら約12年、大学まで自宅ならさらに4年だが、兄弟姉妹の年齢差、性格、受験、大学進学、一人暮らしで重なり方は変わる。

夫婦2人になった後も3LDKは決して無駄とは限らない。夫婦それぞれの部屋とLDKにする、1室を納戸や趣味室にする、子どもが帰省したときに使う。荷物は年齢とともに増えることもある。だから「老後は1LDKで十分」と一般化するのも乱暴だ。

一方で、4LDKの4室目が本当に不可欠なのは、子どもの個室需要と在宅勤務が重なる期間だけという家庭はありうる。

国土交通省の2025年度調査では、雇用型就業者の25.2%にテレワーク経験があり、直近1年間の実施率は16.8%だった。コロナ後に消えた働き方ではないが、全員が毎日行う働き方でもない。会社の方針で出社回帰すれば、専用仕事部屋の必要度は短期間で下がる。[7]

2人の子どもが個室を使い、親がダイニングでオンライン会議をする3LDKのAI生成イラスト

3LDKそのものが失敗なのではない。子どもの個室、夫婦の寝室、リモート会議が同じ時間帯に重なると、静かな一室だけが足りなくなる。

ここで4LDKへ買い替えるのは、ピーク需要を恒久設備に変える判断である。近所に一室借りるのは、ピークの間だけ容量を追加する判断だ。ITでいえば、年に数回のアクセス集中のために最大容量のサーバーを永久に抱えるか、必要な期間だけ計算資源を増やすかの違いに近い。

4. 近所のワンルームは「1室追加」以上の価値を持つ

3LDKが4LDKになると、増えるのは居室一つである。近所にワンルームを借りると、玄関、トイレ、場合によっては風呂、ミニキッチンまで含む独立した空間が増える。この差は大きい。

仕事では、会議の声、機密情報、早朝や深夜の作業を生活空間から切り離せる。家族にとっては、誰かが感情を落ち着ける場所、受験期に集中する場所、夫婦や親子が一対一で話す場所にもなる。思春期の家庭では、常に全員が同じ箱の中にいるより、徒歩数分だけ距離を取れることが関係を守る場合もある。

昔の物語に出てくる「離れ」は、母屋から完全に断絶せず、それでも別の空気を持つ場所だった。広い庭に小屋を建てられない都市生活でも、近所の賃貸なら似た機能を持てる。

家族の家から近所の仕事部屋へ歩く親を描いたAI生成イラスト

遠い二拠点生活ではない。食事や就寝の基本は家族の家に置き、徒歩数分だけ環境を切り替える「都市版の離れ」である。

ただし、利点は距離が近いときに最大化する。電車や車で20分なら、家族との食事や小さな用事のたびに移動コストが発生する。目安は徒歩5分以内、理想は2〜3分。地図で範囲を指定できる不動産検索を使い、急がず、空いたら借りたい建物を先に決めておく。自宅を引っ越すわけではないので、半年待てること自体が借り手の強みになる。

5. 月7万円なら10年約1,000万円──ただし内訳を隠さない

「家賃7万円なら年間84万円、10年で840万円」は正しい。しかし、それだけでは済まない。仲介手数料、礼金、保証料、火災保険、鍵交換、更新料、追加の電気・通信がある。

国土交通省によると、居住用賃貸の仲介手数料は貸主・借主から受け取る合計で原則「賃料1か月分×1.1」が上限である。更新料や保証料、敷金・礼金は全国一律ではなく、契約ごとに確認が必要だ。[8][9]

以下は相場の断言ではなく、比較のためのモデルである。礼金1か月、仲介1.1か月、初回保証0.5か月、鍵と初回火災保険各2万円、更新料1か月を2年ごとに4回、保証更新年1万円、火災保険2年ごと2万円と置いた。敷金1か月は一時的な資金拘束として表の総額から外し、退去費用と引っ越し・家具費も含めない。

月額家賃・管理費家賃10年初期・更新等契約コスト計光熱・通信を月1.2万円追加した総額
5万円600万円約55万円約655万円約799万円
7万円840万円約67万円約907万円約1,051万円
9万円1,080万円約79万円約1,159万円約1,303万円

月7万円の部屋を10年使うなら、追加の生活インフラまで含めて約1,050万円。「10年で約1,000万円」という感覚は妥当な範囲にある。ただし、5年で不要になれば長期部分はほぼ半分にできる。出社回帰、子どもの進学や独立、家族構成の変化に合わせて終了できることが、この案の本体である。

一方、持ち家の住み替えには、広い家との差額だけでなく、売る費用と買う費用がかかる。国土交通省が示す400万円超の売買仲介手数料上限は「成約価格×3%+6万円+消費税」。仮に5,000万円の家を売り、6,000万円の家を仲介で買うと、仲介手数料の上限だけで売却約171.6万円、購入約204.6万円、合計約376.2万円になる。さらに登記、ローン、印紙、不動産取得税、引っ越し、場合によっては譲渡税が加わる。[10][11]

だからといって賃貸が必ず安いわけではない。広い家は高い売却価値を残す可能性があるし、近所の家賃が高ければ10年の賃貸は逆転する。比較式は次のようになる。

近所の離れ総額 = 家賃+初期費用+更新+追加インフラ+退去・家具費

住み替え増分 = 新居との価格差+売買諸費用+追加利息+増えた税・管理・修繕−将来の売却価値差

広告の「月々返済額」同士ではなく、この二つを同じ利用年数で比べるべきだ。

6. どの地域なら成立するか──7万円を全国共通にしない

2026年3月のアットホーム調査では、東京23区、東京都下、神奈川、埼玉、千葉、札幌、仙台、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡の全13地域で、マンション・アパートの全ての面積帯が前年同月より上昇した。東京23区の単身向けマンションは22か月連続、大阪市は20か月連続で2015年以降の最高値を更新している。[12]

つまり「7万円なら、どこでも風呂トイレ別のまともな部屋が借りられる」とは言えない。東京23区の駅近では難しくても、都下や埼玉・千葉・神奈川の郊外、大阪市の中心から外れた地域、政令指定都市の住宅地では候補が増えることがある。同じ市内でも駅、築年、面積、設備で差は大きい。

日本の小さなワンルームを静かなリモート仕事部屋にしたAI生成画像

必要なのは豪華なセカンドハウスではない。会議できる机、安定した通信、温度管理、トイレ、必要なら仮眠できる程度の小さな部屋でよい。

候補物件は次の順で絞るとよい。

  1. 自宅玄関から実際に歩き、雨の日でも5分以内か確認する。
  2. 家賃だけでなく管理費、更新料、保証、保険、短期解約違約金を一覧にする。
  3. オンライン会議の声が近隣トラブルにならない構造・時間帯か確認する。
  4. 固定回線を引けるか、携帯回線で十分かを測る。
  5. 仕事をやめても勉強部屋や家族の退避場所として使うか、即解約するかを決める。

借りた瞬間から10年使う前提にしない。3年、5年、10年の三つで総額を出し、毎年「まだこの部屋は家賃以上の時間と関係を生んでいるか」を見直す。

7. 契約と家族のルールを曖昧にすると、第二の家賃だけが残る

最も重要なのは、不動産会社へ用途を隠さないことだ。居住用契約でも在宅勤務を認める物件はあるが、来客、看板、法人登記、事務所専用利用を禁止する契約は多い。日中の個人作業と、従業員や顧客が出入りする事業所は別物である。「寝泊まりもする第二住居で、会社員がオンライン勤務する」「個人事業の登記を置く」など、実態を説明して書面で確認する。

火災保険、会社のテレワーク規程、情報セキュリティも確認する。家族が自由に出入りするなら鍵と端末の管理、機密会議中の入室ルールが必要だ。逆に、家族を締め出し、片方の親だけが好きな時間に逃げ込む部屋になると、家族全体の解決ではなくなる。

契約前に、次の四つを家族で決めたい。

  • 目的:仕事、受験、仮眠、対話のうち何に使うか
  • 優先順位:誰が、何時から何時まで使えるか
  • 予算上限:家賃だけでなく年間総額でいくらまでか
  • 終了条件:出社週3日、子どもの独立、利用月20時間未満など、何が起きたら解約するか

退去時の原状回復は「借りた当時の新品状態へ戻す」ことではなく、国土交通省のガイドラインでは、通常使用を超える故意・過失等による損耗が借主負担という考え方が示されている。ただし特約の確認は必要で、壁への吸音材固定や大型家具による傷を軽く見ない方がよい。[13]

また、月7万円は年収400万円世帯には可処分所得への負担が大きい。児童のいる世帯の平均可処分所得は621.5万円だが、平均は個々の家計を保証しない。教育費、住宅ローン、管理費・修繕積立金、緊急資金を差し引き、それでも継続できるかを見る。[6]

8. まとめ:「ちょうどいい家」を持ち、足りない時期だけ借りる

持ち家は安定を、賃貸は可変性を買うものだと考えると、両方を同時に使うことは矛盾ではない。

3LDKを買った判断が間違いだったから、近所に一室借りるのではない。赤ちゃん、学童期、受験、リモートワーク、出社回帰、子どもの独立で変わる需要に対して、家全体を売買せず、小さな単位で対応するのである。

赤ちゃん期、子どもの成長と仕事部屋の利用、夫婦2人の時期をつないだAI生成イラスト

家族の必要面積は一直線に増え続けない。必要な時期だけ外付けし、役目が終われば返すから、住宅を人生最大の瞬間に固定しなくてよい。

この案が向くのは、同じ生活圏へ長く住む見込みがあり、現在の持ち家に大きな不満はなく、部屋不足の理由と期間が見えていて、徒歩圏に手頃な小規模賃貸がある家庭だ。転勤が多い、家計に余白がない、周辺家賃が高すぎる、そもそも今の家や地域を変えたい家庭には向かない。

住み替えの内見を始める前に、まず自宅の周囲200〜500メートルを地図で囲み、ワンルームを探してみる。3年、5年、10年の総額を出す。それから、広い家との差額と売買諸費用を並べる。

「持ち家か賃貸か」ではなく、安定させたい部分はどこか、変えられるままにしたい部分はどこか。 問いをそう変えると、家族に必要なのは4LDKへの大移動ではなく、角を曲がった先の小さな一室かもしれない。

免責:本記事は住まい方を考えるための一般的な情報と試算であり、特定の物件購入・売却・賃貸契約を勧めるものではありません。税、ローン、契約、保険、用途制限、家賃相場は地域・物件・時期・個人条件で異なります。実行前に不動産会社、金融機関、税理士等の専門家へ個別に確認してください。

参考文献・出典

  1. [1]KADOKAWA『賃貸か持ち家か? こだわりマイホームを手放して賃貸生活でお金も貯まりました』。2024年2月刊。
  2. [2]SUUMO「賃貸VS買う」。50年間の費用比較でも前提次第で大差が出にくいこと、柔軟性と資金計画の違いを整理している。
  3. [3]ニッセイ基礎研究所「『持ち家か、賃貸か』。法的視点から『住まい』を考える」。経済合理性だけでなく、自由度・安心・災害等の価値を含むと論じる。
  4. [4]国立国会図書館サーチ「検索方法」。検索対象・資料種別・所蔵範囲によって結果が変わるため、本記事では恣意的な冊数を示していない。
  5. [5]総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」。2023年10月1日時点。
  6. [6]厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査」統計表。所得は2023年1年間の値。
  7. [7]国土交通省「令和7年度テレワーク人口実態調査」。2025年10月、就業者4万人へのWeb調査。
  8. [8]国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」。売買・賃貸の仲介手数料上限を参照。
  9. [9]国土交通省「民間賃貸住宅」。入居・更新費用、解約条件、原状回復を契約前に確認するよう案内している。
  10. [10]国土交通省 住まリテ「住まいにはどんな費用がかかる?」。購入時の仲介、融資、税と、所有中の固定資産税、管理費、修繕積立金等を整理している。
  11. [11]国税庁「土地や建物を売ったとき」。譲渡所得、取得費、譲渡費用、マイホーム特例の概要を参照。
  12. [12]アットホーム「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向(2026年3月)」。募集家賃は賃料と管理費・共益費等の合計。
  13. [13]国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」。通常損耗と借主の故意・過失等による損耗を区別する考え方を参照。

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