高所得者は“払うだけ”でよいのか?— 所得制限と公平性を考える

ファーストクラス理論を手がかりに、税の集中負担と給付の所得制限の矛盾、制度の更新ポイントをデータと事例で検討します。

公開日: 2025年9月13日
読了時間: 1
著者: ぽちょ研究所
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はじめに

「高所得者は補助金の対象外」――子育て、教育、エネルギー対策などで設けられてきた“所得制限”。一見もっともらしく見えますが、税の大部分を支える高所得者を「納めるだけ・受け取るな」と扱うのは合理的でしょうか。ファーストクラス理論で考えます。


1. ファーストクラス理論:誰が“飛行機”を支えているか

  • エコノミーの低運賃は、ファースト/ビジネスの高運賃があるから成立。
  • 「飲み物はエコノミーだけ、ファーストは不要」は筋が通らない。
  • 税でも同様に、高所得者の多額の納税が公共サービスと補助の土台。彼らが給付対象であるのは原理的に当然です。


2. 高所得者の税負担(データ)

国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」より:

  • 平均年収は約460万円
  • 年収800万円超は全体の約10〜12%(上位1割強)
  • 所得税収は上位20%で約70%を負担
  • → 少数が税収の大半を担う構図が明確です。


3. 所得制限の撤廃の動き(改善)

  • 児童手当:2024年10月から所得制限撤廃
  • 高校授業料支援(例:東京都私立):所得制限撤廃へ
  • 大学授業料支援(2025年度〜多子世帯):所得制限なしで減免
  • 普遍主義へと舵を切る動きが始まっています(少子化対応・行政効率・不満緩和等の観点)。


4. なお残る「お金持ちは受け取るな」発想の背景

1) 平等と公平の混同:弱者優先=正義と短絡しがちで、強者には不要という誤解が生まれる。

2) メディアのフレーミング:低所得救済を前面に出し「高所得への給付=無駄」という印象が強化。

3) 妬み・感情的反発:豊かな層が受け取ると“ずるい”と感じる規範が残存。


5. なぜ不合理か(政策設計の観点)

  • 高所得者も国民であり、巨額の納税を通じて既に社会を支えている。
  • 給付の一定割合は税として戻るため、ネットでの不公平は想像より小さい。
  • 所得制限の線引きは行政コストや歪み(手取り逆転など)を生む。
  • → 普遍的な設計の方が公平性・効率性・納得感が高い。


6. 公平な社会のために(提案)

1) 「支払った人も受け取る」原則:多く納めた人が対象外になる理屈は弱い。

2) 所得制限の乱用抑制:設計をシンプルにし、行政コストと歪みを最小化。

3) 価値観の更新:

  • 「高所得者=搾取対象」という古いイメージから脱却
  • 納税者全員を尊重する文化へ

まとめ

  • 高所得者は少数だが税収の大半を担う。
  • 所得制限撤廃の動きは、公平性回復の兆し。
  • 「受け取るな」発想は感情に依存し、政策の合理性を損なう。
  • 普遍主義的な制度設計が、持続可能で公正な社会に近い。

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