自公連立崩壊から自民・維新連立へ:過去・現在・未来の政策転換

2025年10月、26年間続いた自民党・公明党連立政権が崩壊し、日本維新の会との新連立が発足。政策転換の背景と今後の展望を詳しく解説します。

公開日: 2025年10月22日
読了時間: 3
著者: ぽちょ研究所
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自公連立崩壊から自民・維新連立へ:過去・現在・未来の政策転換

2025年10月、高市早苗氏が自民党総裁に就任し、それまで26年にわたり続いた自民党・公明党連立政権が決裂しました。公明党は高市氏との党首会談で企業・団体献金規制を巡る対立から連立離脱を表明し、同党離脱後の衆議院勢力は自民196、維新35(国民民主27、立憲148、公明24、過半数233)となりました。

10月15日の協議で自民党と日本維新の会は連立政権合意の方向を確認し、20日に合意書に署名して「自維連合政権」が発足。高市総裁(=有力視される次期首相)が21日の首相指名選挙で維新の支持を得る見通しとなりました。

こうして自公から自民・維新への連立再編が実現し、政策の大転換期を迎えています。以下、これまでの経緯や過去30年以上の経済社会の反省点と併せて、新連立でどのような政策変更が予想されるか、国際比較も交えて詳述いたします。


1. 自公連立の歴史とその崩壊

自民党と公明党の連立は1999年10月に始まり、その後約26年にわたって与党の中枢を維持してきました。この期間に日本は「失われた30年」と呼ばれる長期停滞を経験しましたが、両党体制の影響と重ねて語られることもあります。

2025年10月10日、企業献金規制を巡る対立が決定打となり、公明党は自民党に連立離脱を通告しました。高市総裁就任直後のこの政変は国会運営にも影響し、10月21日召集の臨時国会での首相指名選挙は、従来の「自公過半数」が崩れた新たな構図で行われることになりました。

維新の会は離脱直後から自民党と政策協議を進め、先述の通り新連立合意へと結実しました。


2. 維新の12項目要求と政策協議の焦点

維新の会は2025年10月15日、自民党との連立条件として12項目の政策要求を提出しました。自民・公明連立崩壊の引き金となった企業献金規制要請も含まれており、特に企業・団体献金禁止、食品への消費税率2年間0%化、国会議員定数削減の3点は自民党が譲歩しにくいとされる焦点です。

一方で、合意の可能性が高い項目も挙げられています。代表的な内容をまとめると次のようになります。

減税・経済対策

  • ガソリン暫定税率廃止(既に他党と合意済みの項目)
  • 社会保険料負担の軽減(後期高齢者支援金等を圧縮し、現役世代1人当たり年間約6万円減)
  • 法人税率引き上げ(増収分で防衛費増強)

教育・子育て

  • 幼児教育から大学院まで教育の無償化拡大(維新は義務教育だけでなく高等・大学教育も目標に掲げる)
  • 東京都では実現した高校無償化・大学奨学金拡充などの先進例がある
  • 出生・保育無償化も要求項目の一つ

地方分権・副首都構想

  • 東京一極集中を是正するため、大阪などに「副首都」を設置し中央省庁機能を分散させる
  • これは大阪都構想への関連策ともされ、災害対策や首都機能バックアップの意義も強調されている

社会保障改革

  • 高齢者医療費窓口負担の1割から3割への引き上げ
  • 最低所得保障(ベーシックインカム)の検討
  • 勤労者向け税額控除(勤労税額控除)の導入
  • など、支給中心から働く層支援へシフトさせる提案が並びます。こうした項目は、従来の高齢者重視策とは対極的な内容です。

その他構造改革

  • NHK受信料無料化や公明党主導の地域振興策への言及はなく、むしろ公明系の宗教団体支援策的項目は提示されていない
  • 道州制導入も要求項目に含まれ、国の行政単位改革にも言及している
💡 NRI(野村総研)の分析: 連立成立時に自民党が受け入れる政策としては、ガソリン税廃止や社会保険料の部分的削減、教育無償化の拡大、副首都構想などが最有力とされています。一方、企業献金禁止や税率大幅引下げ、議員定数削減などは調整が難しいとされています。

維新の要求を受けて自民党は一定の譲歩を迫られますが、高市政権の「積極財政・金融緩和路線」は維新の財政健全化志向によって軌道修正を余儀なくされる可能性が指摘されています。


3. 日本の経済社会:失われた30年と世代構造

日本の実質GDP成長率の平均をみると、1960~73年の7.2%(高度成長期)から1973~83年に2.2%へ鈍化し、83~91年にはバブル期で3.6%に回復したものの、1991~2000年以降はわずか0.5%と急減しました。

この「失われた30年」は自公連立政権期と重なり、人口減少やデフレ、世界的な競争激化と相まって経済成長を抑え込んできました。近年では緩やかな回復傾向も見られますが、人口構造は厳しさを増しています。

現在の課題

  • 日本の2023年時点の高齢化率は約30%(65歳以上人口)に達し、年金・医療・介護の社会保障コストが増大
  • 現役世代は非正規雇用比率の高さや低賃金に直面し、賃金は長年停滞したまま
  • 公的債務残高はGDP比で約260%(2023年)と主要国最悪水準
  • この先も少子化対策や防衛力強化など財政需要が膨らむ見通し

4. これからの政策転換:決定的に変わるポイント

自公連立時代は高齢者・福祉重視色が強かったのに対し、新連立では「成長と勤労者支援」に重点が移ると予想されます。具体的には、所得税減税(主に高所得者向け)よりむしろ勤労税額控除や社会保険料の引下げによって働く世代の可処分所得増加を目指す方向にシフトします。

高齢者を対象とした所得税減税や一律給付(例:20,000円子ども手当)は、効果が限定的で財政負担が大きいため後退する可能性があります。代わって、高齢者自身の負担増(医療費窓口負担の3割化等)や、年金制度改革への検討が進むでしょう。

税制面での変化

税制面でも変化が予想されます。現在の税収/GDPは約34%(2022年)で他の先進国並みですが、米国は約27%、フランス約45%、スウェーデンは40~50%台と各国の制度・社会保障のあり方は様々です。

新政権は財政健全化の必要から消費税や法人税も見直し議論が必須となる見込みで、維新側の「食品消費税ゼロ」「法人税率引上げ」のような要求も交渉材料となる可能性が高いです。実際、OECDは2026年に法人実効税率を4ポイント引上げて防衛費増を賄う前提を置いています。

社会保障・教育分野

社会保障・教育分野では、維新が掲げた「教育無償化」は一部実現される可能性があります。既に高齢化対策で財源を圧迫する国の財政を勘案すれば、子育て・教育投資で長期的な人材育成を図る動きが強まります。

逆に、公明党色の「宗教団体への支援」や「年長者優遇政策」は縮小し、全世代型社会保障への転換が求められます。

防衛・外交面

一方で、防衛や外交はやや強硬化が予想されます。公明党が穏健な安全保障観を持つのに対し、維新は国防強化や自主憲法制定に賛成姿勢であるため、防衛予算の増額や日米同盟強化が加速するとみられます。

実際、OECD見通しでは2025~26年度に防衛支出をGDP比0.2ポイント増加させる計画であり、それに合わせた企業課税増(4%)も提案されています。

デジタル・イノベーション政策

デジタル・イノベーション政策は現状の継続・拡大路線で進むでしょう。高度医療連携やAI活用には産業界の期待が大きく、富士通・日立・NTTなどIT企業への事業機会増加が見込まれます。

これに伴い、理系技術者や情報系人材の需要が一層高まり、一部では人材流出や待遇格差を招く可能性も指摘されます。今後、人工知能(AI)やデジタル化を利用した行政・医療改革(マイナ保険証の活用など)が推進され、これまで行政コストと情報分断が課題だった分野で統合が加速する見通しです。


5. 国際比較:アメリカ・北欧・欧州・アジア各国

主要国との比較から日本の位置づけを考えると、以下のような違いがあります。

アメリカ

低税率・小さな政府志向で、企業活動とイノベーションを重視する市場原理主義的経済体制。税収/GDPは約27%と日本より低いが、軍事費や研究開発費は高い。個人所得税率は高所得向けに累進性があるものの、日本のような一律給付や手厚い医療制度はなく、自助努力への依存が強い。近年はバイデン政権によるインフラ投資や半導体支援もあり、技術革新に積極的。

北欧(スウェーデンなど)

高福祉・高負担モデルで知られ、税収/GDPは40~50%台に達する。教育や医療は原則無償で、失業保険や育児休暇など社会的安全網も充実。企業寄付の規制は緩く、福祉財源は高い所得税・消費税で賄う。近年は人手不足対策やデジタル行政改革に注力しており、全世代的な再分配志向が強い。

ドイツ・フランス

中所得モデル。ドイツは製造業輸出主導で慎重財政(GDP比税収約38%)、フランスは政府主導型・高公共支出(税収約44%)の傾向が強い。両国とも医療・年金は広範囲で制度化され、企業への社会保険負担も重い。少子化対策としては積極的に家族手当や給付型税控除を導入している。防衛面では欧州連携を基軸としながらも、昨今はウクライナ情勢を受けてNATO貢献を強化している。

中国

国家主導の経済発展モデル。国有企業・計画投資が成長をけん引し、経済成長率は近年6~8%程度で推移。高齢化が急速に進む一方、社会保障制度は発展途上で企業保険によるカバーが多い。米中技術覇権競争の中、デジタル監視やハイテク育成(AI・EV・半導体)に注力している。軍事拡張も同時進行で、日本とは安全保障上のライバルとなっている。

韓国

輸出主導・財閥依存型経済で、少子高齢化が進む。税収/GDPは30%前後で日本よりやや低い。社会保障制度は日本より後発だが、国民健康保険や国民年金は義務化されている。教育熱心でIT技術は先進的(5G、AI研究強化)。政治的には与野党が激しく対立しやすく、財閥改革や脱原発など政策の不確実性も高い。日米韓安保協力の一角を担うが、北朝鮮情勢で防衛費増大が課題となっている。 これら諸国を比べると、日本は政府債務残高/GDP比が世界最高水準である一方、社会保障負担は北欧ほど高くはない(OECD平均で社会支出21%程度)です。今後、日米欧中の動向を睨みながら、日本の政権は財政健全化と成長促進の両立を迫られることになります。

国民心理的には「頑張る者への報酬」に前向きな層と、社会的弱者保護を重視する層の間で意見が割れやすく、各国同様に世代や地域・産業によって受け止め方が異なるでしょう。


6. 今後の展望と国民へのインパクト

自公連立時代にできなかった規制改革や財政出動が、自民・維新連立で実現に向かう期待感は高いです。一方で高齢化対応・社会保障の財源や日米関係などは慎重な対応も求められ、自民党内部でも政策調整は続きます。

OECDは、2025~26年度に防衛支出をGDP比0.2ポイント増(財源は法人税増)すると仮定し、基礎的財政赤字/GDPを2024年1.5%→2026年0.6%まで削減する見通しを示しています。これは国力強化に向けた財政支出をしつつ、名目成長率が国債利払いを上回る形で債務比率を2023年227%→2026年213%まで低下させる前提です。

実際の政策では、菅政権以来の「給付つき減税」や過度のバラマキ支出は手控えられ、よりターゲットを絞った支援策になる可能性が高いです。

国民生活への影響

国民生活への影響としては、真面目に働く世代の税負担軽減・所得増加と、財政再建のための歳出見直し・負担増の綱引きになります。教育無償化やインフラ投資、ハイテク産業振興は若年層・産業界にとって大きな追い風となるでしょう。

防衛・外交面では、アメリカなど海外に対して自信を持った対応が強まり、国防費の増加も容認されやすい環境になりそうです。一方で、高齢者福祉や宗教団体支援には相対的に重点が移るため、公明党支持層からは反発が出るかもしれません。


まとめ

自民党が長年の公明党連立を離れ、日本維新の会と手を組むことで、「現役世代と地域活性化に重点を置く」政策への転換が鮮明になりました。今後5~10年程度で、税制・規制・社会保障の改革が急速に進み、成長戦略型の政治課題にシフトしていく見込みです。

国民の目には、「真面目に働く者が報われる公平な社会」「国力を再興し世界に活躍する日本」という前向きなビジョンが示されつつあり、2027~2030年に向けて新政権の政策動向は引き続き注目されます。