モバイルバッテリー火災の原因・事故事例と対策

リチウムイオン電池を内蔵するモバイルバッテリーの火災事故が増加中。発火メカニズムから具体的事例、消費者向け対策、各国の安全規制まで詳しく解説します。

公開日: 2025年10月26日
読了時間: 1
著者: ぽちょ研究所
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モバイルバッテリー火災の原因・事故事例と対策

はじめに

スマートフォンやタブレットの普及で、外出時の充電に欠かせないモバイルバッテリー(携帯用充電器)ですが、その利便性の反面、リチウムイオン電池を内蔵するため火災事故も増えています。

実際、製品安全情報マガジンによれば、2020~2024年の5年間でリチウムイオン電池搭載製品の事故が1,860件報告され、その85%(1,587件)が火災につながっており、特に気温上昇期の6~8月に多発しています。

本稿では、リチウムイオン電池特有の発火メカニズムから具体的事故例、消費者向けの注意点、各国の安全規制まで、初心者にもわかりやすく解説します。時折ユーモアも交えつつ、ポイントを押さえて学んでいきましょう。

火災の原因

モバイルバッテリー火災の主因は、電池内部でショートや異常反応が起こることです。リチウムイオン電池には揮発性の高い電解液と酸素供給体(正極材)が含まれ、電極が何らかの原因で接触すると、急激な化学反応で熱と酸素が発生し、電解液が燃焼し始めます。この反応が発火温度に達すると熱暴走が起こり、温度が数秒で300~600℃に跳ね上がることも報告されています。内部電解液の酸化ガスで圧力が高まって電池外殻が破裂するケースや、たとえ膨張だけでも強い衝撃を加えると発火に発展する例もあります。

また、外部環境や使用状況によっても危険度は高まります。高温・直射日光下(熱くなった車内や日当たりの良い机上など)で使用・保管すると、異常反応が起きやすくなります。過充電や不適合充電器の使用、過度の放電も発熱を招き、発火につながるおそれがあります。さらに、落下や圧迫など強い衝撃を与えると電池内部に傷がつきショートを起こして異常発熱・発火することがあります。膨張したバッテリーを無理に押し込むなどの力学的ストレスも同様です。

粗悪品・非純正バッテリーにも注意が必要です。安価な非純正品は安全設計や品質管理が不十分で、保護回路が正常に働かない場合があります。海外メディアの報告では、購入後数年使い込んだAnker製のモバイルバッテリーが充電中に突如炎上する事故がありました。この例では、使用4年目のバッテリーが急激に加熱・爆発しましたが、不幸中の幸いで火災には至りませんでした。メーカー側も「バッテリーは消耗品で、長期間の使用や誤使用でトラブルを招く危険性がある」として、劣化症状について注意を呼び掛けています。

以上のように、リチウムイオン電池の性質(高エネルギー・可燃性)と使用状況・品質の両面から発火が引き起こされます。火災はスイッチ一つ、衝撃ひとつで起こり得るため、常に注意が必要です。

実際の事故

近年、国内外でモバイルバッテリー関連の火災事故が相次いで報告されています。消費者庁やNITEのデータによれば、2020年以降は夏場を中心に事故発生件数が増加傾向です。主な事例を挙げると、以下のようになります。

2023年8月(熊本県):男性(40代)が車内に放置したモバイルバッテリーが高温で発火し、車両が焼損しました。夏場の炎天下で車内に置いたままにしたことが原因と考えられています。

2025年9月(東京都):アパートの一室で使用中のモバイルバッテリーが突然発火し、室内のカーペットなどが焼損しました。東京消防庁の実験によると、火災時には電池温度が一瞬で600℃近くに達し、金属酸化物から噴出する酸素が可燃性樹脂と反応、熱暴走が連鎖的に広がることが確認されています。

2025年10月(上海行き航空便):航空機内でも事故例があります。中国・Air China便で、乗客の機内持ち込み手荷物に入れられていたモバイルバッテリーが「突然発火」し、飛行機は上海浦東空港へ緊急着陸しました。幸い大事には至りませんでしたが、機内では爆発防止のため厳しい規制が敷かれています。

2025年10月(米ノースカロライナ州):消防署員の自宅で、飼い犬「コルトン」がモバイルバッテリーを噛んでしまい、瞬時に炎上する珍事件が発生しました。炎上した電池はテラスへ投げ出され、カーペットが焦げた程度で大事には至りませんでしたが、犬は「コルトン!なんで噛んだの!?」と飼い主(同僚の消防士)に叱られるハプニングとなりました。この奇妙な一件も、「バッテリーの管理の大切さ」を思い出させる啓発素材となっています。

これらの事例から分かるように、「何の前触れもなく火を吹く」のがリチウム電池の恐ろしい特長です。列車内や公共施設、寝室などでも同様の発火事故が報告されており(例:線路内や駅ホームでの発煙事案など)、使用者が安全意識を持たないと大惨事につながる危険があります。

対策とポイント

では、消費者は具体的にどう気をつければよいでしょうか。政府・業界団体からは以下のポイントが挙げられています。日常的に次の点に注意しましょう:

衝撃を与えない:モバイルバッテリーは落下や圧迫で内部が損傷しやすく、内部ショートから発火することがあります。落としたり重い荷物で圧迫したりしないよう注意し、膨張・変形したバッテリーは使用を中止しましょう。

高温を避ける:直射日光の当たる場所や夏の車内、暖房の近くなど高温になる環境では使用・保管しないでください。充電中も風通しの良い場所で行い、布団や枕元で寝ながらの使用は控えましょう。

充電は目の届く範囲で:充電中はできるだけ目を離さないようにし、過充電や過熱の兆候がないか確認しましょう。就寝時や外出時に充電したまま放置するのは非常に危険です。

異常を感じたら使用中止:使用中に異常発熱、膨らみ、焦げ臭い匂い、異音などの兆候があれば、ただちに使用を中止してください。特に「膨張・変形」はバッテリー内部に可燃性ガスが溜まったサインです。異常を感じたら販売店やメーカーに相談しましょう。

安全な製品を選ぶ:PSEマークなどの法規制マークの付いたメーカー保証のある製品を選び、正規ルートで購入しましょう。海外製やノーブランド品の中には保護回路がない製品もあるため注意が必要です。

過失火防止:万が一発火した場合は、まず周囲の安全確保を。可能なら大量の水で消火します。リチウムイオン電池火災は水で冷却するのが効果的です(ただし、水反応注意の二次被害対策が必要なケースもあり、専門家の訓練を受けた消火法に従います)。

廃棄時も注意:不要になったバッテリーは他のゴミと混ぜず、自治体の定める回収ボックスやリサイクルに出してください。普通ゴミと一緒に捨てると、ごみ収集車内で圧壊されて火災を起こす恐れがあります。リサイクル可能なら家電量販店などの回収窓口を利用しましょう。

航空機内では規制を厳守:航空機に持ち込む際は規制が厳しいので、事前にルールを確認しましょう。国際的にはワット時定格量(Wh)100Wh超~160Wh以下の電池は携帯数に制限があり、160Wh超は原則持ち込み禁止です。日本の航空法でも同様の規定があり、160Wh超は預け入れも含めて禁止、100~160Wh以下は2個までとされています。また、100Wh以下の電池でも数個以上になると航空会社の判断で制限されることがあるので注意しましょう。中国国内線ではさらに3C認証マークの有無がチェックされ、認証なしの製品は没収対象です。

以上の対策を日頃から実践することで、モバイルバッテリー事故のリスクは大幅に下げられます。ポイントは「安全な製品を正しく使い、普段から異変に敏感になること」です。例えば「発熱している?」「膨らんでいる?」と感じたら迷わず使用をやめ、信頼できる業者に相談しましょう。

法規制

モバイルバッテリーは各国で安全基準や規制が定められています。日本では電気用品安全法(PSE法)により、モバイルバッテリーは特定電気用品に該当し、2018年2月1日以降はPSEマークの表示がない製品の販売が禁止されています。つまり国内で流通するものは必ず経済産業省指定の検査機関で合格したものです。また、前述の通り航空機に持ち込める容量にも厳しい上限があります。

海外では、中国のCCC(中国強制認証、通称3Cマーク)が該当します。2025年6月28日以降、中国国内線にリチウム電池製品を持ち込む際は3Cマークが必須となりました。日本で販売されている多くのモバイルバッテリーには元々3Cマークが付いておらず、この規制の施行以降、中国国内線への持ち込みで没収される事例が相次いでいます。在北京の日本大使館からも「3C認証は日本のPSEマークに相当する認証」と案内が出ており、中国渡航時には注意が呼びかけられています。

欧米では、日本のPSEに相当するCEマーク(EU)やUL認証(米国)などがあり、製品安全の証明として用いられます。国際航空輸送協会(IATA)の規定では、いずれの国際線も100Wh超~160Wh以下は2個まで、160Wh超は禁止というルールを採用しています(本数制限や許可手続きも航空会社により異なります)。要点は「法令を遵守した安全認証済み製品」を選び、容量制限ルールを守って取り扱うことです。法律・規格は多岐にわたりますが、大きくは日本のPSE、中国の3C、そして航空関係法規を守れば、一般消費者に求められる要件は概ね満たされます。

まとめ

モバイルバッテリーは現代生活には欠かせない便利アイテムですが、使い方を誤ると火災事故につながることもあります。この記事ではそのメカニズムから具体例、対策、法規制まで幅広く解説しました。ポイントは"過信しない"ことです。製品を軽く見ず、安全性の確かなメーカー品を使い、使用中は異音・異臭・発熱に敏感になりましょう。ニュースで見たような怖い事故は、誰にでも起こり得るからです。最後にユーモアを交えてもう一度注意喚起を:消防署員コルトンくんの教訓を忘れず、「犬にはバッテリーをかじらせない!」これ以上に分かりやすい教訓はないでしょう。

以上の点を心に留め、安全にモバイルバッテリーを活用しましょう。安全な充電・保管を徹底すれば、便利なバッテリーも怖いアイテムではなくなります。事故を未然に防ぎ、楽しいモバイルライフを送りましょう!