RAG(検索拡張生成)とは?生成AI・AIエージェント・MCPとの違いを完全解説

注目のAI技術「RAG(検索拡張生成)」を初心者向けに徹底解説。生成AI、AIエージェント、MCPとの違いや関連性、ChatGPTのウェブ検索との関係まで分かりやすく紹介します。

公開日: 2025年10月10日
読了時間: 5
著者: ぽちょ研究所
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みなさん、こんにちは。今日は「最近よく聞く RAG(Retrieval‑Augmented Generation)」という AI 用語を中心に、生成系 AI(Generative AI)、AI エージェント(AI Agent)、そして MCP(Model Context Protocol) との違いや関連性について、順を追って解説していきます。


1. はじめに:なぜ「RAG」が注目されているのか

まず、「RAG」が AI の世界で急速に注目されている背景を押さえておきましょう。

  • 大型言語モデル(LLM = Large Language Model)は、訓練データとして与えられた大量のテキストを内部にパラメータとして記憶し、これをもとに文章を生成する仕組みです。しかし、訓練後には「新しい情報」や「組織独自のナレッジベースにある最新データ」などを反映させにくい、という課題があります。
  • 一方で、AI を実用化したいケースでは、「最新のデータを参照できる」「特定の社内文書を引ける」「信頼できる根拠を示せる」などが求められます。
  • そこで、LLM に外部情報源を「検索・参照してから生成する仕組み」を組み込もう、という発想から RAG(Retrieval‑Augmented Generation) が生まれました。
  • つまり、RAG は「生成モデル(=文章を作る力)」に「情報検索(retrieval)」を組み合わせて、より正確で文脈に即したアウトプットを得る手法です。


2. RAG(Retrieval‑Augmented Generation)とは何か

2.1 基本概念

“RAG” という言葉は “Retrieval‑Augmented Generation” の略で、「検索で得た情報を補強してから生成を行う」方式を指します。

つまり、次のような流れになります:

  1. ユーザーからの質問やプロンプトを受け取る
  2. それに関連しそうな文書や情報を外部データベース/ナレッジベースから検索する(retrieval 部分)
  3. 検索で得た情報を文脈としてモデルに与える
  4. モデルがその情報を踏まえたうえで文章を生成(generation 部分)する
  5. この構成によって、モデルは単に「訓練時に記憶したこと」に頼るのではなく、「最新データ」や「ドメイン固有情報」を参照できるようになります。

2.2 特長と利点

RAG による主なメリットは以下の通りです:

  • 正確性の向上・誤情報の抑制
  • 最新性
  • ドメイン適応
  • コスト効率
  • ただし、RAG を使うには以下のような注意点もあります:

  • 良い文書検索(retrieval)設計が重要。
  • 検索対象を持つためのインフラが必要。
  • 外部情報源の品質・信頼性・更新性に左右される。
  • プロンプト長(コンテキストウィンドウ)制約も考慮。

2.3 実装パターン

  • Retriever + Generator 構成
  • In‑context RAG(プロンプト埋め込み)
  • Self‑RAG(自己改善型)
  • マルチモーダルRAG(画像などにも応用)

3. 生成系 AI(Generative AI)との違い・位置づけ

生成系 AI は、テキスト・画像・音声などを 新たに生成する能力を持つ AI モデル全体 を指す広いカテゴリです。

  • 例:GPT 系モデル、Stable Diffusion、DALL·E、音声合成モデルなど。
  • RAG はこの生成系 AI を補強する仕組みであり、

「生成系 AI vs RAG」ではなく「生成系 AI + RAG」
という関係になります。

4. AI エージェント(AI Agent)とは何か

AI エージェントとは、ユーザーの代わりに 一連のタスクを自律的に計画・実行できるプログラム のことです。

特徴:

  • 計画・分解能力
  • ツール活用能力
  • 判断能力
  • 結果フィードバック
  • RAG とエージェントの関係:

  • RAG は「情報を取得して答える」仕組み。
  • エージェントは「情報を取得して行動する」存在。
  • つまり、RAG は 知識の強化装置、エージェントは 行動する知能体 です。


5. MCP(Model Context Protocol)とは?

MCP は AI モデルが外部ツール・データソースと接続するための標準プロトコル です。

  • Anthropic により 2024 年に発表。
  • AI エージェントと外部API・ファイル・データベースを安全にやり取りするための共通ルール。
  • いわば「AI用のUSBポート」。
  • RAG が「情報を取り込む」技術なら、MCP は「ツールと情報をやり取りするための通信規格」です。


6. RAG・AIエージェント・MCP の関係

概念 役割 関係
生成AI テキストや画像を生成 RAGに情報を与えられる側
RAG 検索+生成の枠組み 生成AIを補強
AIエージェント タスクを計画・実行 RAGを活用して行動
MCP 標準プロトコル エージェントと外部ツールを接続

→ すべては補完関係にあり、「RAGで知り」「エージェントが動き」「MCPでつながる」 世界が目指されています。


ユーザー: じゃあ、ChatGPTが、インターネットを調べて回答するのもその一種、少し違う?


とても良い質問です。 結論から言うと―― ✅ 「広い意味では RAG の一種」 といえます。 ただし、⚠️ 「研究論文で定義される RAG」そのものとは少し構造が違う のです。


1. ChatGPTのウェブ検索付き回答の仕組み

  1. ユーザー質問を解析。
  2. 内部でウェブ検索ツールを呼び出す。
  3. 関連ページを取得して要約。
  4. その内容を踏まえて生成。
  5. → まさに「検索 → 要約 → 生成」= RAG 的構造です。


2. 典型的なRAGとの違い

比較項目 典型的なRAG ChatGPTのウェブ検索
検索対象 社内文書・特定DB インターネット全体
検索方式 ベクトル検索 キーワード検索+要約
目的 精度と根拠 最新情報・時事対応
出典管理 明示しやすい 要約時に抽象化される

つまり、ChatGPTのウェブ検索は RAGの思想を応用した「動的なRAG」 です。


3. ChatGPTは「RAG+AIエージェント」の中間

ChatGPTは単にRAGを使うだけでなく、

  • 必要な時だけ検索する、
  • 複数ステップを自動で制御する、
  • という「自律判断」ができる点で AIエージェント的 でもあります。


4. RAG+MCP+エージェントの融合

未来のAIはこの3要素の統合で進化します。

  • RAG:外部情報を取り込む。
  • MCP:外部ツールと通信する標準。
  • エージェント:行動・判断する。
  • 調べて答えるAI から 理解して動くAI へ。


5. まとめ

観点 ChatGPTのWeb検索 RAGの一般定義
関係 広義のRAGに含まれる 狭義は社内DB型RAG
対象 Web全体 特定ナレッジベース
制御 内部自動 開発者設計
目的 最新情報補完 精度・信頼性強化

つまり ChatGPT の検索回答は、

「RAG の理念を取り入れた、動的・自律的な AI エージェントの実装」
と考えるのが最も正確です。